中東の UAE には以前から退職者向けのビザがあったようですが、2021年に条件などに変更されて現在の形になったようです。本記事では、現在の退職者向けビザについて説明します。
なお、UAE はアラブ首長国連邦の名の通り、ドバイ、アブダビなどの首長国が集まって出来た国で、各首長国によって各種制度が異なりますが、本退職者ビザは UAE の国としての制度のようです。
多くの国のリタイアメントビザは、その国に一定期間以上滞在する必要があるのですが、UAE のリタイアメントビザにはそうした条件はありません。多拠点生活を送りたい方には向いているビザだと思います。
概要
まずは簡単に概要を説明します。
- 年齢55才以上が条件
- 金銭面では、以下のいずれかの条件を満たす必要がある
- 180,000ディルハム/年(約670万円)、または15,000ディルハム/月(約56万円)以上の収入がある
- 100万ディルハム(約3700万円)以上の定期預金(3年)がある
- 100万ディルハム(約3700万円)以上の資産がある
- 5年間有効
- 上述の金銭的な条件を満たす限り更新可能
- 滞在義務は無し
- 健康診断、健康保険の加入が必須
- 家族の帯同可能
- 就労はリモートワークも含め、恐らく不可(※)
- 銀行口座開設可能
本記事では、金銭面で一番低い条件である「180,000ディルハム/年(約670万円)、または15,000ディルハム/月(約56万円)以上の収入がある」の場合を中心に書いていきます。
本ビザの公式情報は、以下のサイトをご覧ください。
- UAE 政府のページ(情報少なめ): Retirement visa for UAE residents – The Official Portal of the UAE Government
- ドバイ政府のページ: Plan your retirement | Visit Dubai
※: UAE にはリモートワーク用のビザが別途あるため、リタイアメントビザでの就労は不可だと思いますが、詳しく調べていないので、興味のある方は直接 UAE 大使館などに問い合わせてみてください。
取得の方法
流れ
金銭面での条件は以下の3つのいずれかを満たす必要があると書きました。
- 180,000ディルハム/年(約670万円)、または15,000ディルハム/月(約56万円)以上の収入がある
- 100万ディルハム(約3700万円)以上の定期預金(3年)がある
- 100万ディルハム(約3700万円)以上の資産がある
このうち、1と2の場合と3の場合で、管轄が異なります。
- 1と2 → General Directorate of Residency and Foreigners Affairs (GDRFA)
- 3 → Dubai Land Department (DLD)
前述の通り、今回は条件1について主に記載します。
手順としては大まかに以下の通りです。
- オンラインで申請
- 承認されたら、費用の支払い
- 現地に渡航し、健康診断をうけ、医療保険に加入
必要書類
- パスポートのコピー
- 戸籍謄本(配偶者がいる場合)
- 収入の証明(年金の証明書など)
- 過去6ヶ月間の銀行残高の証明書(最低15,000ディルハム/月の収入があったことの証明)
特に記載はありませんでしたが、書類は基本的には英語である必要があるはずです。
なお、申請時点では、医療保険への加入は必須ではないです。
必要な費用
申請に必要な費用は全部で3,714.75ディルハム(約14万円)です。必要書類にかかる費用などを含めても、それほど多くの金額は必要ないと思います。
詳細・補足
金銭面でのメリット
前述の通り、UAE は複数の首長国から構成されていますが、移住するとなるとやはりドバイが第一の選択肢となります。ドバイのメリットは何と言っても基本的に無税な事でしょう。もちろん、物価、特に家賃は高いので、収入は年金のみという日本の典型的な年金生活者にとってはドバイ在移住のメリットはあまり無いと思いますが、年金以外の収入がある方にとっては税金面のメリットは大きいと思います。
また、本サイトで何度か触れていますが、富裕層で無くとも資産は分散しておいた方が良いので、ドバイの銀行口座が開設できるというのは大きなメリットでしょう。
これも何度も触れていますが、今はマネーロンダリング対策で、どこの国でも銀行口座の開設が難しくなっていて、その国での有効なビザが無いと口座の開設はほぼ不可能です。一方、ビザとは異なり銀行口座には有効期限などはないので、一度開設してしまえば、基本的にはずっと使えます。
滞在義務が無く、多拠点生活に適している
本サイトの読者の方はご存じかと思いますが、多くのビザには滞在義務が存在します。例えば、1年間の半分はその国に滞在していないと、ビザの更新が出来ない、といったものです。そうしたビザの場合、多拠点生活はできません。
一方、UAE のリタイアメントビザでは滞在義務が無いため、
- 1年の半分はドバイに住んで、残り半分は別の国に住む
- ドバイを拠点にして、世界各国を旅行して回る
などといったライフスタイルを柔軟に決めることが可能です。
また、ドバイはシンガポールと並ぶ世界的なハブ空港で、ドバイから世界各国へのアクセスは非常に良好です。ドバイを拠点にして、世界各国を旅して回るというのも良い選択肢だと思います。
まとめ
UAE のリタイアメントビザは、55才以上で月に約56万円以上の定期収入がある人であれば取得可能です。ドバイは家賃・物価が高いため、典型的な年金生活者に取ってはあまり魅力的ではありませんが、年金以外の収入がある方であれば、ドバイの無税というメリットを享受できると思います。
また、本ビザには滞在義務が無く、また、世界的なハブ空港であるドバイがあることから、多拠点生活を送りたい方は最適だと思います。