以前、マレーシアのリタイアメントビザである MM2H について記事を書きました。
MM2H はマレーシアという国の制度ですが、マレーシアのサラワク州には州独自の MM2H 制度があります。MM2H と区別するために、サラワク州 MM2H、あるいは S-MM2H と呼びます。
S-MM2H 概要
特徴等
- 最初は5年間、更新するとさらに5年間で、合計10年間滞在可能
- 更新の条件として、年間15日以上サラワク州に滞在する必要がある、というのがある
- 10年後にさらに延長したい場合は、新たに S-MM2H を取得し直す必要がある
- サラワク州だけでなく、マレーシアのどこにでも滞在可能
- 出来る事・出来ない事
- 就労は不可
- 銀行口座の作成可能
- 不動産購入可能
- 21才以下の未婚の子供は同伴可能
- コロナ禍の2021年7月3日現在でも、申請受付中
- 申請から取得まで、50〜60日程度
詳細は、以下の公式ページを参照して下さい。
Official Website of Ministry of Tourism, Arts and Culture Sarawak
取得の条件
S-MM2H 取得の条件は MM2H と似ています。
- 基本は50才以上が対象
- 配偶者の年齢制限は無し
- 経済力の証明のため、以下のどちらかが(※1)必要
- サラワク州内の銀行に預金し、その後も一定額を保持する
- 既婚: RM300,000以上 (約800万円)入金、RM180,000以上 (約480万円)保持
- 未婚: RM150,000以上 (約400万円)入金、RM90,000以上 (約240万円)保持
- 年金(50才以上)またはマレーシア国外からの収入(30才以上)の証明
- 既婚 RM10,000/月(約27万円)
- 独身 RM7,000/月(約19万円)
- サラワク州内の銀行に預金し、その後も一定額を保持する
- 40才以上50才未満の場合、不動産購入をすることで申請可能
- サラワク州内にRM600,000以上(約1640万円)の居住用不動産の購入
- 30才以上50才未満(※2)の場合、以下のどちらかの場合に申請可能
- 子供がサラワク州内の学校に通う
- 本人がサラワク州内の病院で長期治療中
- 未婚か既婚かで条件は変わるが、子供が増えても条件は変わらない
2021年10月以降有効となる MM2H 新制度では取得に必要金額が大幅に引き上げられたため、 S-MM2H は MM2H よりも必要金額が大幅に低いです。
条件に関しては、サラワク州が作った以下の資料(PDF ファイル)を参照しました。
Application Procedure of S-MM2H Guidelines 1 September 2020
※1: 両方満たしていると、申請がより通りやすいようです。
※2: 上の資料だと「30〜50才は申請可能」と書いてありました。一方、日本の業者のページだと、「30〜39才」と記載しているところが多かったです。本記事では、サラワク州が作った資料を正としました。
取得手続き
流れ
日本在住の人が取得するまでの一般的な流れを以下に示します。
- 銀行での定期預金のためのサポートレターをサラワク州観光芸術文化省(MTAC)に申請
- 銀行口座の開設、必要額の振り込み
- 現地に渡航
- 健康診断
- 申請
- 一度帰国
- 審査
- 50〜60日程度かかります
- (その間、サラワク州移民庁と代行業者/スポンサーの間で面談があるようです)
- 審査が通ったら、再度現地に渡航
- 手数料の支払い、ビザの受け取り
一度現地に行って申請して、申請が通ったら再度渡航して受け取るという流れです。1回の渡航で済む MM2H と比べると 2回渡航するのが若干面倒ですが、取得に必要な日数は MM2H よりは短いです。また、フィリピンの SRRV のように現地で申請が通るまでずっと滞在する必要があるのに比べれば圧倒的に楽です。
手続きの1, 2, 5 は、基本的には代行業者がやってくれるので、必要書類だけ集めてあれば、比較的簡単に取得可能です。
手順については、マレーシア移住を専門で扱っている業者さんの以下のページを参照して下さい。
サラワク州MM2Hビザ(S-MM2H)申請サポート | マレーシア・ジョホールバルへの移住のことならIKI LINKS
必要書類
必要書類は以下の通りです。
- 申請書類等
- パスポートのコピー(認証が必要)
- カラー写真
- 経済的証明
- 直近3ヶ月の銀行の明細、収入の明細
- 月収の証明
- 日本での無犯罪証明書
- 戸籍謄本(家族で取得する場合のみ)
MM2H との違い
MM2H と比べたときの主な違いは以下の通りです。
- S-MM2H の長所
- 取得までの時間が MM2H より短い
- 取得の条件が緩い
- 必要な金額が MM2H よりかなり少ない
- 50才以上の場合、不動産購入は不要
- S-MM2H の短所
- サラワク州に15日間/年の滞在義務がある(更新時の条件の1つ)
- 有効期間は5年間+5年間。10年以上滞在したい場合は、再度申請が必要
- 就労は禁止(MM2H は、条件を満たせば可能)
S-MM2H を検討すべき・選ぶべき人
以下の人は、マレーシア移住に際し MM2H ではなく S-MM2H を検討すべきでしょう。
- 移住まであまり待ちたくない人
- S-MM2H は、MM2H より取得にかかる日数は少ないです
- MM2H の資産基準を満たせない人
- MM2H は、1,500,000リンギット(約3900万円)以上の資産が必要
- S-MM2H は、50才以上であれば収入証明だけでも申請可能
- サラワク州に住みたい人
- MM2H では、サラワク州には住めません
- サラワク州以外に住みつつ、年間15日のサラワク州での滞在義務を満たすのは結構大変
ちなみに、私自身は40代ですし、サラワク州に住みたいわけでもないのですが、MM2H 取得に必要な金額が大幅に上がってしまったので、S-MM2H も検討しています。
サラワク州とは
最後に、サラワク州について簡単に触れておきます。
広大な自然
サラワク州の名前は聞いたこと無くてもボルネオ島の名前は聞いたことがあるかもしれません。世界で3番目に大きな島であるボルネオ島は、マレーシア、インドネシア、ブルネイの3カ国に分かれています。ボルネオ島のマレーシア部分はさらに、サラワク州、サバ州、そして以前紹介したラブアン(連邦直轄領)に分かれています(※)。
※: 正確には、ラブアンはボルネオ島の近くにある小さな島ですが。
ボルネオ島は自然豊かな場所で、サラワク州内も広大な国立公園など、自然が沢山あります。以下の観光局のサイトを見てもらうと何となく雰囲気は掴めるかと思います。高い建物もほとんどありません。
ボルネオ島は巨大ですが、サラワク州もそれなりに広く、大雑把には本州の半分よりちょっと小さいくらいです。その広さで人口は約250万人(2009年)なので、いかに自然が多いかが分かるかと思います。
高度な自治権
サラワク州は、マレーシア国内でも高度な自治権を有しています。マレーシアに MM2H があるのに、サラワク州独自で S-MM2H という別の制度を作って運用できるのもそれに関連しています。
また、サラワク州では入境管理が行われており、マレーシア国民であってもサラワク州と行き来するには身分証が必要となります。さらには、通常の MM2H ではサラワク州に住むことはできません。
マレーシアは連邦制で、州による違いが大きいですが、その中でもボルネオ島にあるサラワク州、サバ州や以前紹介したラブアンは、独立性が強いです。
まとめ
マレーシア・サラワク州は、ボルネオ島に位置し、マレーシア国内でも高度な自治権を有します。
サラワク州独自の制度である S-MM2H は、マレーシアの MM2H と異なり、経済的な要件が緩い反面、サラワク州内に年間15日滞在しないといけないというのが更新時の条件となっています。
サラワク州に住みたい、あるいはサラワク州以外のマレーシアに住みたいがお金がそこまで用意できない、という人にとっては S-MM2H が選択肢となると思います。