本サイトでは、日本から近い東南アジアの国の紹介が多かったのですが、今回は東欧のチェコにフリーランスとして移住するという内容を書きます。個人的にも、チェコには知り合いが住んでいたり取引先があったりと馴染みのある国です。
概要
開業届とビザは別物
チェコにフリーランスとして移住する方法ですが、大まかに言うと
- チェコでフリーランスとして開業届(Živnostenský list、略称 Živno、英: Trade license)を取得する
- 開業済みのフリーランスとして、長期ビザ(Long-term visa、半年間有効)を取得する
- その後、長期滞在許可(Long-term residence、最長2年有効)の取得が可能
という仕組みです。
制度概要
- 開業届(Živno)
- 社会保険、健康保険、納税の義務が発生
- 業種の制限は少ない
- 長期ビザ
- 生活費として、銀行口座に124,500コルナ(約63万円)が必要
- 最初は6ヶ月間有効
- 長期滞在許可
- 最長2年間有効、更新可能
- 数ヶ月チェコを離れていても問題無いが、長期間だと更新できない可能性もある模様
- チェコに5年間滞在後、永住権の申請が可能
チェコは制度が良く変わるようなので、詳細は在日チェコ大使館に問い合わせるのが確実です。
ビザ取得方法
流れ
典型的な方法を以下に記載します。
まずは、Živno と長期ビザの取得です。
- 日本で必要な書類を集める
- チェコにビザ無しで渡航
- 開業届(Živno)を申請
- 住む場所を決める
- チェコ国外(近隣諸国、あるいは日本に帰国して)へ移動
- 長期ビザを申請
- 長期ビザのためのインタビュー
- 長期ビザの取得
- 再度チェコに移動あるいは渡航
- 警察で居住登録
- Živno の手続きを行う
- Živno の申請完了
無事、Živno と長期ビザが取得出来たら、後は以下の通り長期滞在許可を取得します。これらは全てチェコ国内での手続きです。
- 銀行口座の開設
- 事業の開始
- 長期滞在許可の取得
色々と面倒なのが分かるかと思います。
必要書類
開業届(Živno)
- パスポート
- 事業を行う所在地の証明
- レンタルオフィス・バーチャルオフィスでも可能
- 無犯罪証明書
- 申請書類
詳細は英語ですが以下のページを参照して下さい。
Trade License – Živnostenský list – CZ Visa and Immigration
長期ビザ(long-term visa)
- パスポート
- Živno 申請受理の証明書
- 銀行口座の残高証明
- 1人当たり124,500コルナ(約63万円)以上
- 住居の証明書
- 写真
- 保険の証明書
詳しくは、チェコ内務省の以下のページを参照して下さい。
- A visa for a stay of over 90 days (long-term) – Ministry of the interior of the Czech Republic
- Proof of funds for the purposes of a long-term visa – Ministry of the interior of the Czech Republic
ただ、在日チェコ大使館のページに以下の記載がある通り、詳しくは大使館に問い合わせた方が良いです。
他のタイプの長期滞在(会社の経営者または役員としての滞在、チェコ人の配偶者となって滞在する場合など)については、個別にご相談ください。
長期ビザについて | チェコ共和国大使館
長期滞在許可(long-term residence)
- パスポート
- 住居の証明書
- 写真
- 収入の証明
- 独身の場合、12,635コルナ/月(※、約6万4千円)
- 税金等の滞納が無い事の証明
- 保険の証明書
- その他、追加の文書を求められる場合もあります。
詳細は以下のチェコ内務省のページを参照して下さい。
- Long-term residence – Ministry of the interior of the Czech Republic
- Proof of funds for the purposes of a long-term residence – Ministry of the interior of the Czech Republic
※: 私が英文を読み違えている可能性もありますので、詳細は専門家か役所に確認して下さい。ただ、取得した人の体験談とかを読んでも、大体そのくらいの金額が書いてありましたので、大きく間違えては無いと思います。
詳細・補足
長期ビザと長期滞在許可
上の「流れ」のところで記載した通り、最初に開業届と長期ビザを取得し、その後に長期滞在許可を取得するという流れです。
最初の長期ビザは、実際に事業を開始する前に取得するので、その業種での資格や経験などを聞かれますので、それに対して上手く答える必要があります。
一方、長期滞在許可は、実際に業務を開始して必要な収入が得られているか、税金の滞納が無いかなどを確認されます。
なお、チェコにはワーキングホリデーがあるので、30才未満の人であれば、
- ワーキングホリデーで入国
- 開業届(Živno)の取得
- 事業の開始
- 長期滞在許可の取得
という流れで長期ビザの取得は省けます。
長期滞在許可の目的変更
長期滞在許可(long-term residence)は、滞在目的(ビジネス、就学等)が決まっています。今回の例では「ビジネス」という目的で長期滞在許可を取得しますが、ビジネスの目的で長期滞在許可を得た場合には、就学等はできません。
長期滞在許可の目的を変更するためには、チェコに5年間滞在している必要があります。チェコに留学などしていて、そこからフリーランスとして働く場合には、5年間滞在という条件を満たせずに長期滞在許可の目的変更が出来ない場合があります。そうした場合には、長期ビザ取得→新規でビジネス目的の長期滞在許可取得という手順を踏んだ方が良いかもしれません。
目的変更の詳細については、以下のページを参照して下さい。
Long-term residence – Ministry of the interior of the Czech Republic
永住権
チェコに5年間合法的に滞在後は、永住権の申請が可能です。英語ですが、チェコ内務省の以下のページに情報があります。
Permanent residence – Ministry of the interior of the Czech Republic
本サイトで他の EU 諸国に関するページを見た方は気づいたかもしれませんが、EU 各国の永住権の制度はどこも似ています。詳しくは以下のページをご参照下さい。
チェコについて
最後に、チェコという国について少し紹介します。
EU 加盟国
チェコは2004年に EU に加盟しました。チェコに長期ビザ、あるいは長期滞在許可で滞在している場合、他のシェンゲン協定加盟国(≒EU 加盟国)には「あらゆる180日の期間内で最大90日間」滞在可能です(以下のページを参照)。
また、チェコで5年間合法的に滞在した後は、EU の長期滞在者(long-term resident)への申請が可能です。これについては、別途記事を書こうと思います。
物価、生活等
物価は大雑把には日本の半分程度です。もちろん、品目や住む場所によって異なりますが、首都プラハであれば、例えば以下のような感じです。
- レストラン
- ランチ: 500円〜800円程度
- ディナー: 1,000〜2,000円程度
- ビール: 100〜200円程度
- タクシー: 初乗り200円程度
- 家賃(プラハ市内はそんなに安くないです)
- ワンルーム: 5万〜10万円程度
- 2LDK: 12万円〜20万円程度
言語
チェコの公用語はチェコ語です。習得が難しい言語と言われており、特に日本人に取っては難解でしょう。似ている言語としては、メジャーな言語ではロシア語が挙げられます。
プラハなどの大都市であれば比較的英語が通じますが、田舎だと英語はあまり通じません。
英語以外の言語だと、ドイツ語、ロシア語が比較的よく通じるようです。ロシア語は、ソ連があった時代には必修科目だったため、50代以降の人であれば通じる可能性は高そうです。
まとめ
チェコのフリーランス向けビザ(正確にはフリーランスとしての開業届+長期ビザ・長期滞在許可)は、EU 圏内に移住可能な数少ない選択肢の1つです(投資ビザ・就労ビザを除く)。
オランダよりは条件は厳しいですが、フリーランスとして生計を立てている方であれば、現実的な選択肢となると思います。