海外移住の際に日本でやるべき手続きは沢山ありますので、以下にまとめます。
- 行政関連
- 住民票を抜く
- 国民年金の任意加入手続き(任意、フリーランスのみ)
- 国民健康保険脱退手続き(フリーランスのみ)
- 郵便物の転送手続き
- 国外運転免許証の取得
- 金融関連
- 銀行口座の解約、あるいは住所変更、その他手続き
- クレジットカードの解約、あるいは住所変更
- 証券口座の解約、あるいは海外転出の連絡・手続き
- 小規模企業共済の廃業、あるいは減額手続き
- 保険の海外転出の手続き
- サービス関連
- 携帯電話の解約、あるいは最安プランへ変更
- 水道、ガス、電気、インターネットの解約
- NHK、その他不要なサービスの解約
- 法人関連(法人取締役のみ)
- 登記情報の変更
- 税理士への連絡・相談
- 海外移住後はやりづらくなる事をやる
- 銀行口座の新規作成
- クレジットカードの新規作成
- 生命保険・医療保険への加入
次に、各手続きを詳細に説明します。
行政関連
住民票を抜く
1年程度の海外滞在でしたら、住民票を残しておくという選択肢もありますが、長期間滞在あるいは永住する場合は、住民票を抜くべきでしょう。
住民票を抜くには、住んでいる自治体の役所で手続きを行います。
国民年金の任意加入手続き
この手続きは「任意」です。
手続きの方法は、役所に身分証明書と年金手帳を持っていけば良いです。住民票を抜く時に、窓口の人に聞けば、教えてくれるはずです。
国民健康保険の脱退手続き
これも国民年金と同様に役所で行います。住民票を抜いた後で、国民健康保険証を持っていけば手続きできます。こちらも、住民票を抜く時に窓口で聞くと良いと思います。
郵便物の転送手続き
これは、通常の引っ越しと同様です。親、親戚等、国内の住所に郵便物を転送するようにしましょう。
国外運転免許証の取得
移住先で免許を取得するとしても、すぐに取得出来るわけではありません。国外運転免許証を取得しておくと1年は海外で車を運転できるので、移住先で車を運転する予定がある人は取得しておくと良いでしょう。
金融関連
金融関連は若干複雑ですが、順番に説明します。
銀行口座の解約、あるいは住所変更、その他手続き
国内の銀行は、講座を持っている人が非居住者になった場合に、解約が必要かどうかは銀行によって異なります。
解約が必要な銀行の場合
解約が必要な銀行であれば、お金を全額下ろすか他行に振り込んだ上で解約します。
ただし、解約が必要な銀行であっても、非居住者の口座を強制的に解約することは無いため、口座を残したまま海外に移住する方も多いです。(あまりオススメは出来ませんが。)その場合、登録している住所は実家の住所などに変更しておいた方が良いです。
使っている銀行が全て「解約が必要な銀行」だった場合、日本国内に銀行口座が1つも無くなってしまい、それはそれで不便です。その場合は、海外移住前に解約が不要な銀行を1つ作っておいた方が良いと思います。
日本の銀行の大半は海外転居前に「解約が必要な銀行」です。
解約が不要な銀行の場合
解約が不要な銀行の場合も手続きが必要な事がほとんどなので、銀行に連絡します。
海外移住後も日本の銀行を使うケースとして、
- 国内の会社からの報酬の受け取り
- 年金の受け取り
などが挙げられます。そうしたお金を移住先で使えないと意味が無いので、
- 移住先の口座を送金先として事前に登録する
- 海外 ATM を使えるような手続きをする
が必要です。
解約が不要な銀行としては、以下のものがあります。(他にもあるかもしれませんので、ご自分のお使いの銀行に問い合わせるのが確実です。)
- 三菱UFJ銀行
- 三井住友銀行
- みずほ銀行
- ソニー銀行
クレジットカードの解約、あるいは住所変更
クレジットカードは銀行と違い、海外移住をする場合でも基本的には解約は不要です。
ただ、その場合も以下が必要です。
- 郵便物・更新カードの受け取りのための、国内の住所
- 支払のための、国内の銀行口座
国内の住所に関しては、住民票の住所である必要はありません。(そもそも住民票を抜くので、国内に住民票はありませんし。)クレジットカードの登録住所を、実家、親戚の住所などに変更しましょう。
なお、一部のクレジットカードは、海外の住所に更新カードなどを送ってくれるものもありますが、ごく一部です。
支払に関しては、国内の口座が必須です。今使っている口座が前述の「解約が不要な銀行」であればそのままで構いませんが、「解約が必要な銀行」であれば別の銀行口座に変更が必要です。
証券口座の解約、あるいは海外転出の連絡・手続き
通常の証券口座(一般、特定、NISA)
証券会社の場合、非居住者はサービスを利用できません。選択肢としては以下の2つです。
- 解約する
- 海外転出の連絡・手続きを行い、海外居住中も口座を保持する(取引は出来ない)
1年〜数年程度であれば後者が良いですが、永住の場合は解約した方が良いと思います。
なお、証券会社によっては「解約」の一択の場合もありますので、お使いの証券会社のホームページなどを検索してみて下さい。
ちなみに、海外移住の手続きをせずに海外からネットバンキングを使用することは、システム上可能です。ただ、ルールとしては NG ですし、今後は罰則などが適用される可能性もあり得ます。
iDeCo
以前は、非居住者(≒海外居住者)は原則として iDeCo の加入者の資格がなかったのですが、2022年5月1日から制度が変わり、国民年金に任意加入していれば加入できるようになりました。以下のページをご参照ください。
2022年の制度改正について|ライブラリ|iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)【公式】
国民年金に任意加入しない場合は加入資格を喪失するため、手続きとしては「加入者資格喪失届」を出す必要があります。加入者資格の喪失後、掛金の拠出は停止されますが、運用は可能のようです。
日本法人の役員は、海外在住であろうと厚生年金、健康保険に加入するので、iDeCo の加入資格はあります。
小規模企業共済の廃業、あるいは減額手続き
非居住者の場合、小規模企業共済の掛金は所得控除にはなりません。以下のページの「非居住者の所得控除の範囲」を参照して下さい。
非居住者の日本不動産に関する確定申告 | 松永篤税理士事務所
また、海外に移住した後でも日本国内の所得がある人を除くと、小規模企業共済の掛金を払い続けるメリットはありません。従って、
- 廃業手続きをして、海外移住前に共済金を受け取る
- 減額手続きをして、毎月少額の掛金を払い続け、定年時に共済金を受け取る
のどちらかが良いと思います。
保険の海外転出の手続き
生命保険などは基本的には海外に移住後も有効ですが、年金保険などは、海外転出前に手続きが必要です。詳しくは、保険会社に問い合わせた方が確実です。
サービス関連
携帯電話の解約、あるいは最安プランへ変更
国内の携帯電話の回線契約は、海外移住に際して不要となるので、一般的には解約します。
ただ、移住後も仕事などで日本に一時帰国する機会が多い場合などは、一番安いプランにして契約を残す、あるいは安い会社に乗り換えるというのも一つの手です。そうすることで、電話番号が変わらないため、知り合い・取引先への連絡もスムーズに行えます。
選択肢としては以下が挙げられます。
- ahamo、povo、LINEMO といった大手キャリアの安いプランに切り替える
- 3G(ガラケー)に切り替える
- 格安 SIM、楽天モバイルなどに乗り換える
個人的には、通信量が1GBまでは基本料無料の楽天モバイルがオススメです。→ 無料では無くなりましたが、依然として値段は安いので検討に値します。
水道、ガス、電気、インターネットの解約
これは通常の引っ越しと同じなので、説明は省略します。
NHK、その他不要なサービスの解約
これは特に書くまでもありませんが、解約し忘れると、無駄なお金が発生します。
移住数ヶ月前から、銀行引き落としやクレジットカードの明細を確認し、どんなサービスを使っているのかを確認しておきましょう。
法人関連(法人取締役のみ)
あなたが法人を運営している人であれば、いくつかの手続きが必要です。
登記情報の変更(代表取締役のみ)
法人の登記簿には代表取締役の住所が記載されています。代表取締役が海外移住する場合は、住所変更があった日から2週間以内に登記変更を行わなければいけません。
なお、以前は、代表取締役のうち最低1人は日本国内に住所がある必要がありましたが、現在は廃止されています。以下、公式情報です。
法務省:外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について
税理士への連絡・相談
日本国内の法人の取締役が、海外移住した後も引き続き同法人から役員報酬を受ける場合、役員報酬から源泉徴収する必要があります。
あたりまえのことですが、海外移住の前に(出来れば検討段階で)顧問税理士に連絡・相談するべきでしょう。
海外移住後はやりづらくなる事をやる
最後は必須ではありませんが、海外移住の前に(日本にいる間に)やっておいた方が良いことをいくつか挙げます。
銀行口座の新規作成
海外移住後に日本の銀行の口座を作ることは基本的には無理と思ってもらって構いません(富裕層とかであれば別かもしれませんが)。
そのため、必要であれば、日本にいる間に「解約が不要な銀行」に口座を作成しておくと良いです。既にそうした銀行に口座があるのであれば、この項は不要です。
クレジットカードの新規作成
国内のカード会社のカードを作るのも、海外移住後は難しくなります。
海外移住後には現地のカードを作る事が多いと思いますが、国によっては、クレジットヒストリーなどの関係で、移住後に直ぐに現地のカードが作れない場合もあります。
そうした場合に備えて、海外移住前に国内のカードを最低1枚は持っている必要があります。
また、クレジットカードについては書くことが多すぎるので別途エントリーを書こうと思いますが、日本の会社のクレジットカードの中には、海外ではなかなか無いような特典があるお得なカードもあります。
- JGC カード、SFC カード(JAL、ANA の上級会員のみ対象。日本にしか無い)
- SPG アメックスカード(海外でも発行されているが、日本版は特典が豪華)
のようなカードは、日本にいるときに発行を検討してみて下さい。
生命保険・医療保険への加入
日本の保険会社の生命保険、医療保険なども、海外移住後に加入するのは難しくなります。海外移住後に現地の保険に加入するのでも良いですが、日本で加入した方がお得なものとかは海外移住前に加入しておくと良いと思います。
ファイナンシャルプランナーなどに相談するのも一つの手だと思います。
まとめ
海外移住前にやるべき事は山ほどあります。その中でも、手続き関連に絞ってまとめて紹介しました。
読んで頂くと分かる通り、金融・税金関連はかなり複雑なので、可能であれば事前に税理士に相談すると良いと思います。