マレーシア法人を設立しての移住と費用

マレーシア移住に関しては、MM2H について以前記事を書きましたが、2021年10月以降取得に必要な金額が大幅に上がるため、他の選択肢としてマレーシア法人の設立・就労ビザの発行も検討してみました。

また、シンガポールに関しても以前に同様の記事を書きましたので、こちらも参考にして頂ければ幸いです。

マレーシア法人を設立して移住する方法

概要

マレーシア法人を設立しただけでは、マレーシアでの長期の滞在資格を得ることは出来ません。これはシンガポールと同様です。

マレーシアでの滞在資格を得るためには、

  • マレーシアで法人を設立する
  • 法人の役員として就労ビザ(Employment Pass = EP)を取得する

という2段階が必要となります。

ちなみに、マレーシアにはラブアン島という租税回避地があり、そこで法人を設立するという選択肢もあり、マレーシアの通常の法人と区別するために「ラブアン法人」と呼びます。それについては別途記事を書いていますが、今回は通常のマレーシア法人について記載します。

前提

本記事では以下の前提で話を進めます。

  • マレーシア法人を設立
    • インターネット上で完結可能な業種(IT、デザイン、コンサルティングなど)
  • 自分自身が法人の代表者として移住(最初は社員は雇わない)
  • 秘書役・会計事務所などは、割高な日系の会社では無く現地の会社を使用
  • マレーシアで自宅兼事務所を借りる

就労ビザの概要

お金の話に入る前に、マレーシア法人の就労ビザの概要について記載します。

  • 最低月額給与によって、3つのカテゴリーに分かれている
    • 最低月額給与が一番低いカテゴリーIIIは、内務省から認可を受ける必要があるのと、更新回数にも制限があるため、本記事では説明しない
  • 雇用期間(=有効期間)は最大5年(カテゴリーI)、もしくは2年(カテゴリーII)
  • 更新は可能
  • 滞在日数の義務はない
  • 取得が年々厳しくなっている
    • 明文化されたルールではないが、2名以上の外国人(日本人)のビザを申請するには、マレーシア人を一定数雇用していないと許可されない

詳細は、以下のページを参照してください。

外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用 | マレーシア – アジア – 国・地域別に見る – ジェトロ

必要なお金

東南アジアのリタイアメントビザであれば、一度取得さえしてしまえば、それ以降にかかる更新料は大したことないですし生活費も日本に比べれば低いので、最初の取得や移住にかかる金額だけ気にすれば良いと思います。一方、マレーシア法人の場合、シンガポールに比べると生活費は高くありませんが、法人の年間の維持費はそれなりにかかりますので、移住後のお金も気にする必要があります。

この方法で移住するために必要となるお金としては、以下の通りです。

  • 初期費用: 会社設立費用等
  • 毎年の維持費
    • 法人維持費用
    • 家賃(オフィス兼用)
    • 自身への給料

実際にどれ位かかるかを計算してみます。

必要なお金を大まかに計算

マレーシア法人の設立をサポートしてくれる会社は多数あり、法人関連の費用についてはそれらの会社のサイトに色々情報がありますが、主に以下のサイトを参考にしました。

法人設立関連費用

設立時に必要な金額は以下の通りです。

  • 法人設立サポート会社の費用 → 8,000リンギット(約21万円、以下リンギットをRMと記載する場合あり)前後
  • 資本金 → RM500,000(約1,320万円)〜
    • 資本金RM1で法人設立自体は出来るが、就労ビザの申請にはこの金額が必要
    • 業種によっては RM100,000〜
  • ビザ取得費用(業者によって異なる)
    • 1名当たりRM8,000(約21万円)
    • 扶養家族はその半額くらい
    • 家族4人で、RM8,000 + RM4,000 x 3 = RM20,000(約53万円)

合計すると、約1400万円(資本金を除くと約75万円)。

法人の維持費用

以下のページが詳しかったので、こちらを参照します。

マレーシア法人の年間維持費用 – Malaysia Experts.net

  • 暫定取締役の費用 → 自身が取締役として移住するので不要
  • 会社秘書役 → 「安いところであれば月額50〜100リンギット(1300円〜2600円)程度から」
  • オフィス(登記住所)費用 → 自宅を使用するので不要
    • バーチャルオフィスを使う場合も、金額はわずかなので省略
  • 会計費用 → 「安いところであれば年間2,000〜5,000リンギット(5万3千円〜13万2千円)」
  • 税務費用
    • 法人税申告 → 「1年に一回(略)2,000〜3000リンギ程度(5万3千円〜8万円)」
    • その他税務 →「様々な税務手続きが発生し、それらに関して別途費用がかかります。」とのことなので、一旦、法人税申告と同じ金額が発生すると想定
  • 会計帳簿・財務諸表作成費用 → 「安いところであれば年額数千リンギ前後(10万円未満)」

ただ、あまり活動実態が無い会社の場合は最安値でいけると思いますが、ある程度ビジネスの実態があると会計・税務の費用は最安値より少し高くなります

結果、「18,000リンギ前後から」との事ですので、日本円で48万円から。少し余裕を見て60〜70万円程度と考えておけば良いのでは無いかと思います。

家賃

場所・間取りによって大きく変わりますが、クアラルンプールの中心部に近い場合は、東京でいうと23区の山手線外、あるいは多摩地区と同程度という感じでしょうか。

  • 単身者: 月7万円〜15万円
  • 家族4人: 月10万〜20万円

としておきましょう。

自身への給料

最低RM5,000(13万円)/月が必要なようですが、実態としてはRM10,000(26万円)/月以上が望ましいようです。年間で320万円程度です

その他

他の国への移住と同様に、引っ越し費用、前家賃なども必要でしょう。シンガポールと同様に大雑把に見積もって、約100万円としておきましょう。

他の方法との比較など

就労ビザの審査が厳しくなっている

マレーシア法人を設立して外国人である日本人に就労ビザを発行するという今回の方法ですが、就労ビザの条件・審査が年々厳しくなっているようです。

MM2H は一度取得すると5年間有効ですが、就労ビザは2年間しか有効で無いため、無事取得したとしても、次回の更新の際に条件や仕組みが変わるといったリスクもあります。

ラブアン法人の就労ビザは今のところ比較的簡単

ラブアン法人の場合は、マレーシア法人に比べて就労ビザは発行しやすいようです。ただ、これもあくまで現時点での話ですので、今後大きく変わる可能性があります。

また、ラブアン法人の就労ビザでラブアン島以外(クアラルンプールなど)に住むのは、若干グレーなので、こちらも今後島内での居住実態を厳しくチェックされるようになる可能性もあります。

レジデンスパスの審査はかなり厳しい

就労ビザで3年以上働くとレジデンスパスという(本当の意味での)永住権の申請が出来ますが、こちらの審査は現在かなり厳しくなっていて、選択肢とは考えられない状況のようです。

MM2H は就労は不可だが実際は・・・

MM2H では就労は出来ませんが、実態としては以下のような事をやっている人も結構多そうです。

  • マレーシア法人(あるいはラブアン法人)を設立する
  • MM2H でマレーシアに居住しているが、日本居住の取締役という建前で法人を運営している

オフィス・店舗が要らない業種、あるいはマレーシアにオフィス・店舗があっても自分自身がそこに立つことは無ければ、(少し黒目のグレーですが)こういう方法でも法人を運営することが出来ます。

まとめ

考慮すべき金額=初期費用+維持費

まとめると必要な金額は以下の通りです。

  • 初期費用
    • 法人設立費用: 約21万円
    • 資本金: 約1,320万円
    • ビザ取得費用: 約21万円(自分1人)〜53万円(夫婦と子供2人)
      • 更新の度に同じくらいの金額がかかる
  • 毎年の維持費
    • 法人の維持費: 約60万円/年
    • 家賃: 約300万円/年(○)
    • 自身への給与: 約320万円/年〜(○)
  • その他、引っ越し費用、前家賃など: 約100万円

初期費用は約1500万円です(資本金1,320万円+法人設立21万円+・ビザ取得21万円+引っ越し等100万円)。資本金は手元に残るお金ですが。

次に毎年の維持費ですが、○の部分は、日本でも同様のお金を支払っていたと思います。シンガポール移住と異なり、○の部分は基本的にはマレーシアより日本の方が高いか同じくらいと思います。従って、維持費としては○が付いていない部分、つまり法人の維持費の年間60〜70万円のみを考慮すれば良いです。

後は、2年に1度ビザの更新があるので、毎年に直すと約11万円〜26万円程度です。

以上を合計すると、毎年の維持費は約71万円〜96万円、ざっくり毎年100万円と見ておけば良いと思います。

まとめます。

  • 初期費用: 約1500万円
    • 資本金約1,320万円を含む
  • 毎年の費用: 約100万円
    • 自身の給与、個人所得税、家賃、生活費などは含まず

が、マレーシア移住に必要な大まかな費用です。

この方法を取るべき人

単にマレーシアに住むだけで無く、マレーシア人を雇用したりマレーシア人相手にビジネスを行ったりする場合は、マレーシア法人を設立するしか選択肢が無いでしょう。

逆に言うと、それ以外では、他の方法が良さそうです。

  • 純粋にマレーシアに住みたい(リタイア等)
    • サラワク州に住みたい → S-MM2H
    • サラワク州以外に住みたい→ MM2H(※)
  • マレーシアで子供の教育を受けさせたい → MM2H(※)、またはラブアン法人経由で就労ビザ
    • ラブアン法人の場合、就労ビザの申請が比較的容易なので
  • 日本の会社の仕事をしつつマレーシアに住みたい
    • 長期 → MM2H(※)
    • 語学学校にも通いたい → Student Pass

※: お金にあまり余裕が無い人は、年間15日間サラワク州に滞在する義務がありますが、S-MM2H の方が圧倒的に安価に取得出来ます。

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