タイには2018年に開始したスマートビザという制度があり、特定の先端技術系産業に従事する人は最長4年のビザを取得出来ます。
タイは、このスマートビザ制度の対象にいわゆるデジタルノマドを含める予定で、現在は内閣の承認待ちのようです。承認されれば、デジタルノマドが比較的簡単かつ安価にタイに滞在できるようになるはずですので、今回はそれについて説明します。
スマートビザ概要
従来のもの
最初に、従来のスマートビザの制度について説明します。
- 以下の種別がある
- スマートT: 高度技術専門者
- スマートI: 投資家
- スマートE: 上級幹部
- スマートS: スタートアップ企業の起業家
- スマートO: スマートビザ取得者の法律上の配偶者及び子女
- 特定の産業(ターゲット産業)に従事している人が対象
- スマートT、Eの場合、雇用主の企業はターゲット産業に従事しているという承認を政府から得る必要がある
- 最大4年間の滞在許可
- 就労可能(就労許可の免除)
- 滞在義務は無さそう
- 更新時にパスポートなどが必要だが、スマートビザのスタンプを押したりするだけで、過去にどこに滞在していたかなどは問われ無さそう
- スマートT、E、S は、タイ国内の企業が対象(※)
- その他のメリット
- 再入国の際の再入国許可証は不要
- 90日毎の滞在レポートは1年毎で良い
- タイの国際空港で、優先レーンの使用が可能
ターゲット産業に該当する業種であれば、タイに法人を設立して、社長=上級幹部として赴任して、スマートEビザを取得するというのは可能そうです。また、社員にスマートTビザを発行することも可能だと思います。
ただ、スマートビザの取得者は2018年の制度開始以降の累計でも1000人に満たないようで、あまり使いやすくなかったのか、周知が足りなかったものと思われます。
※: あるいは、「タイに派遣させる外国企業」(スマートTの場合)でも可能のようですが、その場合は、タイ国内の企業との業務委託契約書とかが必要なようです。
従来のスマートビザに関しての詳細は、Thailand Board of Investment (以下、BOI)が出している、以下の日本語の資料が分かりやすいです。
https://www.boi.go.th/upload/content/BOI_smart%20visa_JP_20180515_5b06828d663a7.pdf
デジタルノマド向けスマートビザ
従来のスマートビザ(スマートT)は、手続きが簡素化された就労ビザという感じですが(タイには、スマートビザ以外の就労ビザもあり、多くの外国企業はこちらを使っています)、それが今回、デジタルノマドにも門戸を開くようです。
以下、概要です。
- 条件
- (日本企業等の)外国企業と6ヶ月以上の雇用契約がある
- 当該職種の資格・経験の証明
- 最大4年間有効、更新可能
- その他、基本的には従来のスマートビザ(スマートT)と同様
条件を見る限りフリーランスの人だと対象にならないのかもしれませんが、日本国内で法人を設立してしまえば問題無さそうです。(日本での法人設立は簡単です。)
申請手続き
手続きの流れ
申請手続きに関しては、英語ですが、以下の公式ページが分かりやすいです。
以下、日本語で簡単に説明します。
- オンラインで申請
- BOI 及び関連省庁での審査、結果通知
- バンコクのビザセンター(OSS)、あるいは国外のタイ大使館や領事館で受け取り
必要書類
必要書類はスマートビザのタイプによって異なりますので、スマートTの場合を以下に記載します。
- 申請書
- パスポート
- 職務経歴書(CV)
- 条件を満たしている事を証明する書類(大学の卒業証書等)
- 前職の証明
- (もしあれば)業績・職務経験・知的財産等を証明する書類
- 無犯罪証明書
- タイ企業との雇用契約書
- 雇用先企業の会社概要
書類は公証人によってタイ語に翻訳する必要があります。
申請が承認されて、スマートビザを受け取る際には、以下の書類が必要です。
- パスポート
- BOI からの通知書
- 書類数種類
- パスポートサイズの写真1枚
費用は1万バーツ(約3万5千円)です。
他の方法との比較
通常の就労ビザ
タイに移住する方法として、タイ法人を作って、就労ビザを申請するという方法もあります。ただ、この方法の場合、外国人労働者1人につき最低200万バーツ(約700万円)の資本金が必要となります。
一方、スマートビザと比べると、業種の制限はほとんど無いので、スマートビザの対象とならない業種の場合は、法人設立して通常の就労ビザを取得するというのも1つの選択肢です。
タイランドエリート
以前紹介した「タイランドエリート」制度は、お金さえ払えば簡単に取得出来ます。家族がいると費用が高くなってしまうのが欠点ですが、単身の方であれば十分選択肢となり得ます。
ただし、タイランドエリートではタイ国内で就労はできません。日本の会社(タイ以外の国)の仕事だけをして日本(タイ国外)の口座にお金が振り込まれるのであれば、タイの行政は把握しようがありませんし実質的には問題とはなりませんが、厳密にはダメです。
まとめ
2018年に導入されたスマートビザプログラムですが、今後は海外の会社で働いているノマドワーカーにも門戸が開かれることになりそうです。最長4年間滞在可能で更新も可能なビザで、リタイアメントビザなどと違って必要なお金も少額ですので、タイに移住したい人にとっては有力な選択肢となり得ます。