欧州の大国、フランスにも「リタイアメントビザ」があります。といっても、東南アジア各国のものとは異なり有効期間は1年間ですが、更新も可能です。
概要
- 1年間有効のビジタービザ
- 更新可能(※)
- フランス国内に住居が必要(賃貸あるいは購入)
- 年金等の収入の証明が必要
- 約243万円/年(※)
- 就労は不可
- リモートワークも避けた方が良い(※)
- 家族の同行可能
※: 詳細は後述します
ビザ取得、更新の方法
全体の流れ
流れとしては、
- 日本にて必要書類を集める
- 在日フランス大使館で申請
- 予約が必要
- 面談がある
- パスポート・ビザ受領
- フランスへ渡航
- 3ヶ月以内に移民局(Office Français de l’Immigration et de l’Intégration = OFII)にて滞在許可証(carte de séjour)の申請、取得
という形です。これで、最長1年間の滞在が可能です。
滞在を延長するには、滞在許可証(carte de séjour)の延長を、滞在中の県に申請します。
まとめると、長期滞在のためには以下のような流れになります。
- 日本でビジタービザの取得
- → フランスで滞在許可証の取得
- → フランスで滞在許可証の延長
ビジタービザの申請方法は、以下のページが分かりやすかったです。
必要な書類
- 申請書類
- 写真1枚
- パスポート
- フランスで労働しない旨の宣誓書
- フランス滞在中の日本における社会的立場を証明するもの(在職・休職証明・在学証明もしくは自身の状況を説明した書類を作成)
- 旅行保険の証明書
- 住居の証明(賃貸契約、あるいは物件所有証明)
- フランス滞在を保証する経済力の証明(銀行の残高、年金等、約243万円/年以上)
- 家族も同行する場合、戸籍謄本(アポスティーユ及び翻訳も必要)
詳細・補足
ビザの種類
フランスのビザは、主に以下の通りに分かれています
- 90日以内滞在用の短期ビザ
- 日本人の場合は不要
- 90日以上滞在用の長期ビザ。以下の2つに分かれる
- 4〜6ヶ月有効な一時長期滞在ビザ(temporary long-stay visitor visa、VLS-T = visa de long séjour temporaire visiteur)
- 4〜12ヶ月有効な一時長期滞在ビザ(long-stay visitor visa、VLS-TS = visa de long séjour valant d’un titre de séjour)
長期ビザはいずれも visitor visa (ビジタービザ)という名前で、その中で就労、就学、旅行者あるいは個人的な渡航(tourist or private visit)、とかにカテゴリーが分かれています。今回の「リタイアメントビザ」は、カテゴリーとしては「旅行者あるいは個人的な渡航(tourist or private visit)」です。
詳しくは以下のサイトを参照して下さい。
General information | France-Visas.gouv.fr
一時長期滞在ビザの取得に関しては、以下のページ、及びそこから飛べる「visa wizard」を参照して下さい。
Tourist or Private visit | France-Visas.gouv.fr
経済力の証明
経済力の証明ですが、最低賃金が基本となるようです。2021年現在、月額1,554.58ユーロ、年額にして18,654.96ユーロ(約243万円)です。同行家族が増えるにつき増額されるので、少なくとも350万円程度は用意しておいた方が良いと思います。
Interprofessional minimum wage (Smic) | Insee
滞在許可証の更新
滞在許可証の更新は滞在中の県で行いますが、ルールが不透明で、実際に取得・延長した人の体験談を読んでも、人によってかなり異なっています。
ビジタービザで入国した人は、一時的な滞在(1年〜2年程度)とみなされ、滞在許可証が更新できないといったケースもあるようです。経済的に許せば、法人を設立するなどの別の方法の方が安全です。
全て英語ですが、海外の人の体験談をいくつか挙げておきます。
- How I Got a Visa Vie Privée et Familiale With a PACS – The Glittering Unknown
- Carte De Sejour Resident and Tax Help — Living in France with US Employer | Expat Forum For People Moving Overseas And Living Abroad
リモートワークはしない方が良さそう
今回の「リタイアメントビザ」(正式には長期滞在ビザ)では、フランス国内で労働しないことが求められます。ただ、例によってリモートワーク(テレワーク)はグレーです。
海外掲示板の以下のページでも色々な情報が出ていますが、
Telecommuting to US company from France | Expat Forum For People Moving Overseas And Living Abroad
- 在米フランス大使館は、リモートワークは問題無いと言っていた
- 滞在許可を更新するのは県なので、そちらでは拒否された
といった話が出ていました。こちらのページ以外にも多数情報はありますので、詳しくは検索してみて下さい。
まとめ
フランスの長期滞在ビザは、年金等の一定額の経済力を証明することで、最長1年間滞在可能です。また、長期滞在許可は延長可能ですが、条件等が明確では無いため、更新できない可能性もあります。確実に長期で滞在・永住したい場合には、他の方法も検討した方が良いと思います。