条件が緩いパラグアイの永住権で、他の南米諸国へのドアを開く

パラグアイの永住権は取得の条件が緩く、約5,000ドル(約55万円)を銀行に預けるなどのいくつかの条件があるのみです。ジェトロのサイトにこんな記事があるくらいなので、本当にハードルが低い事は信じてもらえるかと思います。

永住ビザも取得のハードルは低い-パラグアイにおける会社設立(2)-(ブラジル、パラグアイ) | ビジネス短信 – ジェトロ

パラグアイは日本から遠く馴染みの薄い国ですが、永住権取得のメリットもあるので、今回説明します。

永住権概要

  • ID カードは10年間有効、更新可能
  • パラグアイの銀行に5,000ドル(約55万円)を預ける必要がある
    • 永住権取得後に、引き出し可能
  • 就労、就学可能
  • 滞在義務はあるが緩い
    • 3年間に1日以上滞在が必要、2年間海外にいるとダメ、といった非公式の情報があった
    • 公式の情報は見つからなかった(※)
  • 家族も同行可能

※ パラグアイ(や他の南米諸国)は、こうした情報が明記されていたとしても、実際にその通りに運用されずに担当者の裁量に任されていることが結構あります。よって、他国に滞在していたとしても、1年に一度くらいはパラグアイに行った方が良さそうです。

パラグアイ外務省のサイトにあった以下の英文 PDF に概要がまとまっています。

PERMANENT RESIDENCE (ACCORDING TO THE MIGRATION LAW No. 978/96)

永住権取得方法

流れ

  1. 日本で必要書類を集める
  2. パラグアイに渡航する
  3. 現地で必要な書類を集める。それに際し、以下も行う
    • 健康診断
    • 銀行口座を開設
  4. 永住権を申請・取得
  5. ID カード(Cédula、セドラ)の申請・取得

必要な書類

永住権

  1. 戸籍謄本(※1)
  2. 無犯罪証明書(※1)
  3. パスポート(顔写真と入国印のあるページ)
  4. 健康診断の結果
  5. パラグアイ国内の無犯罪証明書(※2)
  6. 外国人用無犯罪証明書
  7. 居住証明書(※3)
  8. 法順守宣誓
  9. パラグアイの銀行での残高証明(5,000ドル以上)

全ての文書は、原本と公証人によって認証済みのコピーが必要です。

※1: 日本で取得します。スペイン語への翻訳が必要です。
※2: 居住証明書の取得のために必要です。
※3: 保証人(パラグアイのセドラを持っている人)が2名必要

必要な書類の公式の情報は以下の通りです。

Migraciones :: Radicación Permanente

取得方法などは、以下の2つのウェブページが細かく丁寧に記載してありますので、参考にして下さい。

ID カード(Cédula、セドラ)

永住権取得後は、セドラと呼ばれる ID カードを取得します。このカードは、さまざまな用途に使える重要なものなので、必ず取得します。

  • 永住許可証のコピー(※1)
  • パスポートのコピー(顔写真のあるページ、※1)
  • 外国人用無犯罪証明書の原本とコピー(※1)
  • パラグアイ国内の無犯罪証明書の原本とコピー(※1)
  • 居住証明書の原本とコピー(※1)
  • 戸籍謄本の原本と翻訳、及びそれぞれのコピー(※1)
  • 申請書類

※1: コピーは、公証人による認証が必要

詳細・補足

セドラ(ID カード)での他のメルコスール加盟国への移動

パラグアイは、メルコスール(Mercosur、南米の貿易協定、Wikipedia のリンク参照)加盟国のため、他の加盟国への旅行は、パラグアイの ID カード(セドラ)のみで可能のようです。

メルコスール – Wikipedia

セドラだけでメルコスール加盟国への移住も可能という事を書いている日本人のブログ記事をいくつか見かけましたが、他国の移民局や移民ビザの情報などを見ても、そうした公式情報は見つかりませんでした(見逃してる可能性もありますが)。また、パラグアイへの移住を扱っている弁護士事務所のサイトでは、セドラを使っての他のメルコスール加盟国への旅行は自由だが、移住はパラグアイ国籍者に限定、との事でした。

従って、セドラのみで他のメルコスール加盟国への移住は出来ない、というのが正解だと思います。ただ、私自身が専門家などに確認したわけでは無いので、興味のある方はご自身で確認することをお勧めします。

ここまでは法的にそうなっているという話ですが、セドラのみで他のメルコスール加盟国へ移住可能と言っている人は、恐らく「実質的に可能」という話をしているものと思われます。

例えば、パラグアイからブラジルに移動する際には、セドラのみ提示すれば問題無く通れるようですし、ブラジルからパラグアイに帰国の際も同様です。そして、セドラを持っている人のチェックは他国のパスポートの人より甘いようなので、「セドラでブラジルに入国して長期滞在して、たまにパラグアイに帰国する」みたいな事が出来てしまうのだと思います。

いずれにせよ、パラグアイのセドラを持っていることでメルコスール加盟国への移動・滞在は格段に楽になります。

保証人

居住証明書の取得では、パラグアイの ID カード(セドラ)を持った保証人2名が必要です。日本人の場合、現地に既に住んでいる方に保証人になってもらうケースが多いようです。

ただ、日本人の方による以下のページによると、保証人が無くても「1万ドルを1年間預ける」のでも問題無さそうです。

*パラグアイの永住権と身分証明書取得に必要な書類を独自にまとめて公開しますのでご自由に参考になさってください* | ☆大和魂世界へ旅立つ☆天地夫婦の南米よちよち歩き☆

あるいは裏金(賄賂)を渡して審査を通してもらう事も可能なようです。これは、発展途上国あるあるですね。法人の場合(従業員をパラグアイに派遣するなど)は、コンプライアンスの観点から裏金を渡すというのはやりづらいと思いますが、個人の場合でしたら(自己責任で)試してみても良いかもしれません。

移住協定

日本とパラグアイの間には移住協定が結ばれており、それのおかげで日本人は簡単にパラグアイの永住権が取得出来るという情報も見かけましたが、(主に欧米人を対象とした)英語のサイトでも5,000ドルあれば比較的簡単に永住権が取得出来る、と書いてありますので、移住協定と永住権はあまり関係無いようです。

移住協定についての情報は、以下のページをご参照下さい。

パラグアイ移住のメリット

生活費が安く、治安もそんなに悪くない

パラグアイは人口も少なく、自然が多く、一言で言えば田舎だと思いますが、その分、他の南米諸国と比べても必要な生活費は安いです。

また、本サイトで何度か紹介した以下のページを見ると、治安面でも「良い」とは言えないものの、他の南米諸国に比べても他の地域の発展途上国と比べても、そんなに悪くないという感じです。

他のメルコスール加盟国への移動が楽になる

前述の通り、パラグアイのセドラを持っていることにより、他のメルコスール加盟国への移動が楽になります。次の項に挙げたビジネスの観点からもこれはメリットだと思います。

南米向けのビジネス拠点ともなり得る

南米向けのビジネスを行うとなると、第一の候補は域内大国のブラジルとなります。一方、パラグアイのメリットとしては

  • 法人税率が低い(10%)
  • 労働者のコストが安い
  • 日系人、日本語が通じる人が比較的多い

あたりでしょうか。

税金に関しては、以下のページをご参照下さい。

パラグアイの新たな税制度が1月1日から施行(パラグアイ) | ビジネス短信 – ジェトロ

その他のメリットについては、以下のページでいくつか紹介されています。

ブラジル進出日本企業の隣国活用メリット探る-パラグアイセミナーがサンパウロで開催-(中南米、パラグアイ) | ビジネス短信 – ジェトロ

今回紹介した方法で永住権を取得してパラグアイに移住し、現地で新たにビジネスを始める・日本のビジネスを展開するというのも面白いかもしれません。

パラグアイ外の所得はパラグアイでは無税

日本を始めとする多くの国では、全世界所得課税と呼ばれる制度を取っています。例えば、日本に住んでいる場合、日本国内の給与収入以外に

  • 海外不動産の家賃収入、売却益
  • 海外の証券会社でのキャピタルゲイン

などにも日本で課税されます。

一方、パラグアイやシンガポールなどでは、国内源泉所得課税という制度であり、国内での所得のみに課税されます。例えば、パラグアイに住んでいる場合、以下のようなものに対しては(パラグアイでは)税金がかかりません。

  • 日本法人からの役員報酬(日本で20.42%の源泉分離課税されるのみ)
  • 海外法人からの配当

よって、日本での所得が多い人は、パラグアイに移住することで節税となり得ます。詳しくは、専門家に相談することをお勧めします。

まとめ

パラグアイの永住権は、安価で比較的容易に取得出来ます。取得する事で、他の南米諸国への旅行や長期滞在が楽になったりするメリットもあります。一方、国としては良くも悪くも田舎なので、若い人の中には物足りなく感じる人もいるかもしれません。

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