クロアチアのデジタルノマド「ビザ」は1年間滞在可能だが更新不可

クロアチアでも新たにデジタルノマド「ビザ」の制度が導入されたので紹介します。「ビザ」と括弧書きにしてある理由ですが、クロアチアの入国はビザ無しで行い、その後に最大1年間の滞在許可の申請を行うという流れだからです。他国でも似たような制度は多いですね。

クロアチア、デジタルノマド「ビザ」の概要

正式にはビザでは無く「一時滞在許可」ですが、以下が概要です。

  • 1年間有効
    • 更新は不可
    • 期限切れ後、6ヶ月経過後に再度申請は可能
  • 滞在予定月数 x 16,907.50クーナ(約29万3千円)の残高証明が必要
    • 12ヶ月で202,890クーナ(約352万円)
    • 家族が1名追加になる度に、10%(1ヶ月当たり1,690.75クーナ、約2万9千円)追加が必要
  • リモートワークの会社員または自営業者が対象
  • クロアチア国内でのリモートワークが可能
    • クロアチア国内の企業での就労は不可
  • 費用は合計660クーナ(約1万1千円、クロアチア国内で申請する場合)
  • 住居の証明、保険が必要
  • 家族も同行可能
    • 本人が許可された後に、別途申請が必要

以下が公式の情報です。

取得手続き

流れ

申請する場所としては

  • 日本のクロアチア大使館
  • クロアチア国内の警察署
  • オンライン

いずれも可能ですが、手間を考えるとビザ無しで渡航して現地でオンライン申請が楽だと思います。以下、典型的な流れを記載します。

  1. 必要書類を集める、旅行保険の契約
  2. クロアチアにビザ無しで渡航
  3. 現地で住居を探す
  4. オンラインで一時滞在許可(最大1年間)を申請: 申請フォーム
  5. 申請が許可されたら、警察署で住所の登録等を行う
  6. ID カードの取得

必要書類

  • パスポートのコピー
  • 保険の証明
  • 仕事に関する証明
    • 会社員の場合: 雇用契約書、会社によるリモートワークで仕事をすることの証明(※1)
    • 自営業者の場合: 会社の登記簿、自身の会社を通して仕事をすることの証明(※2)
  • 銀行の通帳(残高証明)
  • 無犯罪証明書
  • クロアチア国内での住所
  • 家族も同行する場合、戸籍謄本等

※1: 職務内容とかを記したもので良さそうです。
※2: 具体的にどんな書類が必要かちょっと分かりませんでした。

全ての書類はクロアチア語か英語に翻訳する必要があります。

その他、補足

長期滞在への道は?

EU 圏の国の大半では、5年間合法的に滞在すると EU 長期居住者の申請が出来るというのを、本サイトでも何回か紹介してきました。では、今回紹介したクロアチアのデジタルノマドビザをまず取得して、その後に長期居住者になることが出来るのでしょうか。

結論から言うと、本デジタルノマドビザ(滞在許可)経由で長期居住者になることは出来ません。というのも、本滞在許可は更新が出来ず再申請まで6ヶ月待つ必要があるため、「過去5年間で、EU長期居住者を申請する国以外に連続して滞在した期間が6か月未満、また合計して10カ月未満であること」という条件を満たすことが出来ないからです。

税金

本制度でクロアチアに1年住む場合、税務上は日本の非居住者=クロアチアの居住者となる可能性が高いです。

ただ、クロアチアの法律では、デジタルノマドの国外(日本等)由来の給与収入や役員報酬に関しては、クロアチアで納税する必要はありません。従って、以下のような処理になりそうです。

年金や配当などの場合はまた違うようですので、そういった収入がある方はクロアチアの専門家に相談することをお勧めします。

なお、クロアチアと日本は租税条約を締結済みですので、片方の国で課税された場合、もう片方の国で控除されます。

新しい制度のため、情報が少ない

本制度は今年(2021年)から始まったもののため、まだまだ情報が少なく、また実際に取得した人の体験談も少ないです。そのため、以下のような点は現時点で不明です。

  • 滞在義務があるのか(1年間のみ有効で更新不可なので、恐らくない)
  • 6ヶ月待てば再申請可能だが、何度再申請できるのか
  • 仕事に関する証明でどのような書類が必要なのか

詳しい情報が入り次第、本記事を更新します。

他の移住方法

クロアチアへ移住する他の方法としては、以下のようなものがあります。

  1. クロアチア国内の企業に就職して就労ビザを取得(本サイトの対象外)
  2. 他の EU 加盟国で、EU 長期滞在者を取得
  3. 他の EU 加盟国で永住権を取得した後に、クロアチアの永住権を取得
  4. 法人を設立して、自分自身のために就労ビザを申請・取得

2つ目に関しては前述の EU 長期滞在者の記事を参照して下さい。3番目は、2番目と似ていますが、他の EU 加盟国の永住権があれば、クロアチアの永住権を申請可能です。2番と3番は共に、(投資移民を除くと)他国で5年間は住む必要があるため、この方法でクロアチアに移住しようと思う人は少ないと思います。

最後の法人設立ですが、本サイトでも他国に関しては記事をいくつか書いています。ただ、クロアチアは役所の手続きなどがかなり面倒なようですし、クロアチア人の雇用義務があるので、移住のためだけに法人を設立するのはお勧め出来ません。

ということで、現状では、他国を経由せずに今すぐクロアチアに直接移住したい人は、以下の選択肢に限られます。

  • クロアチアの企業に就職する
  • 他国の投資永住権を取得してから、クロアチアの永住権を取得する
  • 本デジタルノマドビザで、1年限定で移住する
    • その後、6ヶ月他国で過ごした後、再度申請する

他の日本語サイトに誤りがある

(どのサイトかは伏せますが、)他の日本語サイトで、英語サイトの内容を(恐らく無断で)訳して載せているようなものもありました。そのうちの1つで、英文の解釈誤りと思われる記述がありました。

本サイトにも言えることですが、個人のブログサイトなどでは誤った情報が記載されていることもありますので、可能な限り公式な情報を参照するようにして下さい。なお、本サイトに誤りを見つけた場合は、コメントなど頂けると幸いです。

クロアチアについて

アドリア海に面していて観光で有名

最後に、クロアチアについて少し書きます。

旧ユーゴスラビアの一部だったというのは知っている人も多いかもしれません。旧ユーゴというと東欧で寒い国というイメージがあるかもしれませんが、クロアチアはアドリア海を挟んでイタリアの対岸にあり、イタリアと同様に観光業が盛んな国です。

ドゥブロヴニクなどは、名前は聞いたことが無くても以下の写真を見れば見覚えがあるかもしれません。

また、本投稿のメイン画像に使ったトロギールなども有名な観光地です。

物価はそんなに安くない

旧ユーゴは東欧なのでクロアチアは東欧と考えることも出来ますし、地理的には南欧なので南欧と考えることも出来ます。東欧も南欧も物価はそれほど高くなく過ごしやすいというイメージがあるかもしれませんが、クロアチアの場合は著名な観光地もありますし、そうした観光で有名な都市では物価もそれなりに高いです。

観光に関係無い首都のザグレブなどは、観光地価格と言うことはありませんが、近隣の東欧諸国に比べると若干高いです。日本に比べると安いのですが、それでも凄い安い!という感じは全くありません。詳しくは「クロアチア 物価」などで検索してみて下さい。

EU、NATO の一員

元々東欧の国である旧ユーゴの一部だったクロアチアですが、現在は EU と NATO に加盟しています。

ただし、残念ながら、(前述の通り)今回のデジタルノマドビザ経由では EU 長期滞在者になることは出来ません。また、それ以外でもクロアチアに移住する簡単な方法は現状ないので、「EU 長期滞在者になるために、どこかの EU 加盟国にまずは移住する」という人にとっては、クロアチアは選択肢とはなりません。

まとめ

アドリア海に面したクロアチアで、今年からデジタルノマドビザの制度が始まりました。滞在期間の生活費分の銀行残高が必要ですが、その他の条件は厳しくありません。ただし、有効期間は1年で更新は出来ないため長期滞在は出来ません。

とはいえ、観光客にも人気の国ですので、1年間ワーケーションをするという場合には良い選択肢になると思います。

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