タイのリタイアメントビザ

タイにはタイランドエリートというお金で買える長期滞在ステータスがありますが、それとは別に、他国のようなリタイアメントビザもありますので、今回紹介します。タイランドエリートについては、以下の記事をご参照下さい。

タイのリタイアメントビザ概要

リタイアメントビザの種類と有効期間

実は、タイでリタイアメントビザと呼べるものは3種類あり、それぞれ有効期間が異なります。

  • ノンイミグラント-O(年金受給者/リタイアメント)
    • 90日間有効、1年間の延長を複数回可能
  • ノンイミグラント-O-A (ロングステイ)
    • 1年間有効、延長は1回のみ(※)
  • ノンイミグラント-O-X (ロングステイ10年)
    • 5年間有効、延長は1回のみ

※: 在東京タイ王国大使館のページでは「ただし延長申請は1回のみ」と明記されているのですが、実際の取得者の情報では複数回更新しているという情報が多く見られます。

本記事ではこれらをまとめて扱います。

公式情報は、以下のページをご参照下さい。

ビザの概要

  • 50才以上が対象
  • 就労は不可
  • 以下のいずれかの条件を満たす必要がある
    • ノンイミグラント-O、ノンイミグラント-O-A
      • タイの銀行に800,000バーツ(約280万円)以上の預金
      • 65,000バーツ(約23万円)以上の年金
      • 預金と年金合算で800,000バーツ(約280万円)以上
    • ノンイミグラント-O-X
      • タイの銀行に3,000,000バーツ(約1,050万円)以上の預金
      • タイの銀行に1,800,000バーツ(約630万円)以上の預金+1,200,000バーツ(約420万円)以上の年収
  • 有効期間は前述の通り
  • 家族同行
    • ノンイミグラント-O、ノンイミグラント-O-A: 配偶者のみ?
    • ノンイミグラント-O-X: 配偶者、子供

取得の方法

何通りかある

リタイアメントビザの取得方法ですが、

  • 国内で申請・取得し、現地に渡航する
  • ビザ無しなどで現地に渡航し、現地で申請・取得・切り替えする

という方法があります。

また、65,000バーツの年金の証明でビザを取得するケースであれば、最初の段階では銀行口座は要りませんが、それ以外の場合は預金残高の証明のためにタイ国内に銀行口座が必要です。

流れ(現地で切り替えの場合)

  1. ビザ無しでタイに渡航
  2. 銀行口座を開設し、必要な金額を入金し、帰国(詳細は後述)
  3. 日本で必要な書類を集める
  4. ビザ無しでタイに渡航する
  5. 住む場所を借りる
  6. 現地で「ノンイミグラント-O」(90日間有効)に切り替える
  7. その後、現地で「ノンイミグラント-O-A」に切り替える(※)

※: ノンイミグラント-O-X もタイ国内で申請・取得出来るようなので、この手順でノンイミグラント-O-X を取得することも可能そうです。

65,000バーツ以上の年金の証明で取得する場合は、1、2の手順は不要

流れ(日本で取得の場合)

  1. ビザ無しでタイに渡航
  2. 銀行口座を開設し、必要な金額を入金し、帰国(詳細は後述)
  3. 日本で必要な書類を集め、ビザ申請・取得
  4. タイに渡航する

必要書類(現地で切り替えの場合)

  • パスポート
  • 申請書
  • 銀行の通帳(原本とコピー)
  • 以下のどちらか、あるいは両方
    • 銀行の残高証明書
    • 年金証書の英訳(※)
  • 写真
  • 住居の地図、写真
  • TM30(居住登録)

※: 英訳及び日本大使館での証明が必要です。

必要書類(日本で取得の場合)

  • パスポート
  • 申請書
  • 写真
  • 経歴書
  • 金融資産を証明する書類、以下のいずれか、または両方(※、金額は後述)
    • 年金証書及び最新の額面入り年金振込通知書(受給年金額が確認できる書類)
    • 過去3か月間の英文銀行残高証明書
  • 戸籍謄本原本
  • 英文無犯罪証明書原本(※、ノンイミグラント-O の場合は不要)
  • 国公立病院発行の英文健康診断書原本(※)
  • 英文身元保証書原本(Guarantee Letter)と保証人の署名入りの旅券または運転免許書のコピー
    • 身元保証人は日本在住で、タイに一緒に渡航しない人(親戚などが良さそうです)
  • 航空券(Eチケット)または航空会社発行の予約確認書コピー
  • タイもしくは日本の海外旅行保険の医療保険証(保険証券)の原本及びコピー1部
  • OIC (Office of Insurance Commission) 規定書式の医療保険加入証明書原本とコピー1部

証明が必要な金額は、前述の通りですが、再掲します。

  • ノンイミグラント-O、ノンイミグラント-O-A
    • タイの銀行に800,000バーツ(約280万円)以上の預金
    • 65,000バーツ(約23万円)以上の年金
    • 預金と年金合算で800,000バーツ(約280万円)以上
  • ノンイミグラント-O-X
    • タイの銀行に3,000,000バーツ(約1,050万円)以上の預金
    • タイの銀行に1,800,000バーツ(約630万円)以上の預金+1,200,000バーツ(約420万円)以上の年収

「※」が記載されている文書は、外務省による認証が必要です。また、残高証明書などの私文書(公的機関以外が発行したもの)の場合は、認証の前に公証人による認証が必要です。

ちなみに、タイは「外国公文書の認証を不要とする条約」に加盟していないのでアポスティーユではなく公印確認が必要です。詳しくは以下のページをご参照下さい。

公印確認・アポスティーユとは|外務省

また、本サイトでもアポスティーユについては簡単に説明してあります。

詳細・補足

銀行口座開設が難関

タイのリタイアメントビザ取得では、65,000バーツ(約23万円/月)の年金の証明でビザを取得するケースを除くと、タイ国内の銀行での預金残高を証明する必要があります。

タイに限らず、近年ではマネーロンダリングなどを防止するため、銀行口座の開設の手続きは厳格化しており、基本的にはその国での有効なビザを持っていないと銀行口座が開けません。預金残高の証明が必要な他国のビザの場合、

  • 銀行口座が無くても大丈夫な選択肢を用意している(フィリピン SRRV 等)
  • ビザ申請の証明書などを提出することで銀行口座が開設可能(マレーシア等)
  • 日本の銀行の残高証明を提出する

といった方式となっています。他方、タイの場合は、リタイアメントビザ申請のためにはタイ国内の銀行口座が必要にも関わらず、タイの銀行口座開設にはタイのビザが必要という鶏と卵問題が発生します。

詳しくは「タイ リタイアメントビザ 銀行口座」などで検索してもらうと多くの情報が出てきますが、この手の話は常に状況が変わるため、銀行・業者などに問い合わせることを強くお勧めします。

ちなみに、こうすれば銀行口座が取得出来た、という情報をまとめると以下のようになります。

  • 既に口座を持っている人と一緒に窓口に行く
  • 日本大使館で発行された「運転免許証抜粋証明」を持っていく(今は「戸籍記載事項証明」でないとダメとのこと)
  • 日本大使館で発行された「戸籍記載事項証明」を持っていく
  • 賃貸契約書(1年以上のもの)を持っていく

また、日本語が出来るスタッフがいる特定の銀行、特定の支店を選ぶことは必須のようです。

国内と現地申請のどちらが良いのか

国内で申請するのと現地でビザを切り替えるののどちらが良いのでしょうか。

上の方に記載した必要書類の違いを見てもらうのが良いと思います。日本で申請する方法だと書類が多く、いくつかの書類は外務省による認証が必要な一方、住居の証明などは不要です。また、国内で申請・取得して現地で更新を行う場合、更新時にも保険関係の書類が必要となります。

次に手続きについてですが、国内の申請は1回で終わりますが、切り替えの場合は2回必要となります。

以上を考えると、手続きの回数は増えますが、現地に行って切り替えた方が楽なのでは無いかと思います。(この辺りは実際の取得者の意見も知りたいところです。)

90日レポート

タイに90日以上居住する外国人は、90日毎に居住地を管轄する移民部に居住地を報告する必要があります。通称「90日レポート」などと呼ばれます。

業者に代行してもらう事も可能ですし、最近ではインターネットでも出来るようですが、面倒な事には変わりありません。

ノンイミグラント-O-X は比較的新しい制度

5年有効、更新可能な「ノンイミグラント-O-X」は2017年に開始した比較的新しい制度のため、実際に取得した人の情報はほとんど見当たりませんでした。

ただ、必要な書類などは「ノンイミグラント-O-A」とほとんど一緒で必要な金額が違うくらいですので、タイに長期滞在を考えている人はこちらのビザも選択肢となり得ます。詳しくは、タイのリタイアメントビザに強い業者などに問い合わせてみて下さい。

タイランドエリートとどちらが良いか

タイランドエリートには年齢制限がありませんし、手続きも簡単です。90日レポートの代行サービスも費用に含まれています。タイランドエリート唯一かつ最大の欠点としては、払ったお金が返ってこないことでしょう。

一方、リタイアメントビザは、収入証明や年金の証明は必要ですが、用意するお金は少なくて済みます。ただし、50才以上しか申請できないのと、更新の頻度が多いことなどが欠点です。

結論としては、50才未満の人、あるいは面倒な手続きをするくらいなら数百万円くらいは払っても良いと思う人、あるいはタイランドエリートのサービスに魅力を感じる人はタイランドエリートを選び、それ以外の人はリタイアメントビザを選ぶのが良いと思います。

まとめ

タイのリタイアメントビザは、50才以上が申請でき、収入要件も比較的低いです。一方、申請手続きはタイランドエリートに比べると若干面倒で、(収入要件が少し厳しい O-X 以外は)毎年更新手続きも必要となります。

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