フィリピンの主な永住権やビザは本サイトで既に紹介しましたが、今回は投資ビザである SIRV (Special Investor’s Resident Visa) を紹介します。今までは、フィリピン移住の大半のケースでは SRRV で十分であり SIRV はあまり使いどころが無かったのですが、後述の理由により、今後は SIRV が必要となるケースが増えるかもしれません。
なお、SRRV、ASRV など、似たような名前のものが多いですが、混同しないように気をつけて下さい。フィリピンの主要なビザに関しては、以下で紹介しています。
SIRV 概要
- 75,000ドル(約820万円)以上の投資が必要
- 投資対象に制限あり
- 21才以上が対象
- 家族(配偶者、21才未満の子供)もビザ取得可能
- フィリピンでの滞在義務は無い
- 年に一回、投資委員会(BOI = Board of Investments)に報告書の提出が必要
- 銀行口座開設可能
- 証券口座も開設可能
- 就労も可能だが、AEP (Alien Employment Permit) の取得が必要
- 外国人登録(ACR)は不要
- ID カードの更新(1年か3年ごと)は必要なので、ACR と手間はあまり変わらない
- 他のビザだと、1年か3年ごとに ACR の更新が必要
- 申請手続きのため、現地で概ね1〜2ヶ月の滞在が必要(後述)
SRRV と似ていることに気づいたかもしれません。
投資委員会のサイトにある以下の PDF ファイル(英語)を読むと、一通り概要は分かると思います。
申請手続き
流れ
以下、典型的な流れです。
- 日本で必要な書類を集める(英訳も含む)
- フィリピンへ渡航
- SIRV に申請したい旨の同意書を BOI へ送付
- BOI から紹介状をもらえるので、それを持って指定された銀行の口座を開設
- DBP (The Development Bank of the Philippines) Makati 支店など
- 開設した銀行口座に75,000ドル以上を送金
- 健康診断等
- 必要書類(口座への入金証明等)を BOI に提出
- BOI にて6ヶ月間有効な仮の SIRV を取得
- 口座のお金を投資への変換
- 必要書類(投資の証明等)を BOI に提出
- SIRV を取得
必要な日数
上述の手順7→8にかかる日数は
- BOI – 7営業日
- BI (Bureau of Immigration = 移民局) – 最低10営業日
とのことです。
10→11も同様に
- BOI – 7営業日
- BI – 最低10営業日
が所要日数です。
ただ、この記述だと、BOI と BI の審査等が並行して行われるのか、それとも片方が終わってからもう片方が開始するのかが明確ではありません。仮に並行して行われるのであれば、手順7→8と10→11で最短で20営業日で終わることになりますが、片方ずつ処理されるのであれば、最短でも34営業日かかることになります。
必要書類
仮 SIRV(手順7)
- 申請書類
- パスポート
- 無犯罪の証明(以下のどちらか)
- 日本で取得し英訳、フィリピン大使館で認証
- フィリピンで取得
- 健康状態の証明(保健省検疫局で認証)
- 戸籍謄本(英訳、フィリピン大使館で認証)
- 入金の証明書
- 手数料
投資への転換(手順9)
- 同意書
- 手数料
- 新設企業への投資の場合
- 公証人によって署名された定款と付属定款のコピー
- 既存企業への投資の場合
- 詳細は省略(※)
- 公開企業への投資の場合
- 証券会社の宣誓証明書
※: この方法は色々複雑なのと、レアケースなため
SIRV (手順10)
- 犯罪経歴証明書
- 事務所または工場の賃貸契約、あるいは所有権の証明と地図
- 新設企業への投資の場合
- 定款と付属定款、SEC の登記簿
- 秘書役による、業務予定開始日の証明
- 内国歳入庁(Bureau of Internal Revenue:BIR)の登記簿
- 営業許可証
- 既存企業への投資の場合
- 詳細は省略(※)
- 公開企業への投資の場合
- 証券会社からの株式の証明書
- 秘書役によって署名された、以下が記載された株式の証明書
- 申請者の名前
- 売却等には BOI の承認が必要な旨の注記
詳細・補足
投資対象
SIRV 取得のためには、許可された投資対象に75,000ドル以上投資する必要があります。許可された投資対象は以下の通りです。
- 公開企業
- 優先投資計画 (Investment Priorities Plan = IPP) に記載されている分野の企業
- 製造業またはサービス業の企業
- 政府証券(国債等)
以前は以下の投資も対象となっていたようですが、今は許可されていません。
- 小売業の企業
- コンドミニアム
ビザ取得の際の書類を考えると、公開企業への投資が一番良さそうです。
SIRV ID カード
SIRV 取得者は ARC I-カードの取得は必要ではありませんが(任意で取得可能)、代わりに SIRV カードというのがあり、これが ID となります。
このカードは基本的には1年更新ですが、以下の投資の場合は3年更新となります。
- BOI 登録企業
- 各種経済特区(PEZA 等)にある企業
BOI への年次報告
ちゃんと75,000ドルの投資が維持されているかを確認するために、1年に1回、BOI へ報告書を提出する必要があります(特定分野への投資の場合は3年に1回)。
といっても、申請内容のフォームを見る限り、それほど難しい内容では無さそうです。
SIRV Annual Report Form – Board of Investments
SRRV は無期限有効で SIRV は1年更新?
日本語のサイトでは SIRV を紹介する際に「毎年更新」という紹介をし、SRRV は「無期限」という紹介をしているところがいくつかありました。
ただ、実際には SRRV でも ID カードの更新が3年に1回は必要ですので、更新頻度という点では SIRV とあまり変わらないと思います。また、SIRV では BOI への年次報告が必要ですが、そこまで難しく無さそうです。
なぜ・誰が SIRV に注目すべきか
50才未満の SRRV の申請受付は停止中
新型コロナにより、SRRV (リタイアメントビザ)の申請受付は停止していました。ただ、2021年5月12日に、50才以上の申請に関しては受付を再開しました。
【領事班からのお知らせ】フィリピンにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の対応について(その106:SRRV申請の再開) | 在フィリピン日本国大使館
では、そのうち50才未満も再開されるのでしょうか。
マレーシアの MM2H と同様、条件が変わる可能性がある
マレーシアの MM2H も、コロナ禍で受付停止が長らく続いていましたが、つい先日、必要金額が大幅に増えた上でプログラムを再開するという発表があり、その界隈では大騒ぎになりました。
公式にはまだなにも発表されていませんが、フィリピンの SRRV も、現在受付停止中の50才未満に関しては条件が厳しくなるという噂が流れています。仮に条件が厳しくなった場合、金額は75,000ドルと SRRV よりは高くなりますが、SRRV と似たような特典を得られる SIRV も選択肢に入ってくると思います。
SIRV を検討すべき人
今までの話をまとめると、以下の人は SIRV を検討すべきでしょう。
- 35才未満の人(今までも、35才未満の人にとっては SIRV は有力な選択肢でした)
- 50才未満の人(今後、SRRV の条件が変更になる可能性もあるので)
まとめ
SIRV は、出来る事としては SRRV とあまり変わりませんが、必要な金額が SRRV よりも大幅に高かったため、今まではあまり注目されていませんでした。
ただ、新型コロナウイルスの影響で SRRV の申請受付が停止され、その後、50才以上に関しては再開されたものの、50才未満は停止されたままです。また、今後、50才未満の申請受付が再開になる可能性はありますが、マレーシアの MM2H のように50才未満の条件が大きく変わる可能性もあります。
SRRV の50才未満の取得条件が厳しくなった場合、人によっては SIRV の方が取りやすくなることもありそうですので、早めに調査・検討を進めることをお勧めします。
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