フィリピンの3つの永住権を比較

フィリピンで日本人が利用可能な永住権(※)には、主に以下の3つがあるのですが、それらの比較をしてみます。

  • SRRV(SRRV クラシックと SRRV スマイルの2つがあるがここではまとめて紹介)
  • クォータビザ
  • ASRV

SRRV と ASRV の詳細に関しては、別記事にまとめてありますので、合わせてご参照下さい。

※: 正確には SRRV と ASRV は永住権では無いのですが、便宜上永住権としてまとめて説明します。

コロナ禍なので・・・

なお、コロナ禍の現在、SRRV は50才未満の申請受付を停止しています。そのため、50才未満の人は SIRV という選択肢もあります。以下の記事にまとめましたので、興味のある方はご覧下さい。

項目毎に比較

費用: SRRV が有利

まずは、表にまとめてみます。

SRRVクォータビザASRV
払込金額預託金
クラシック: 1万〜5万ドル
スマイル: 2万ドル
預託金
5万ドル
プログラム参加料
3万ドル
申請料等1400ドルなし※11.8万ドル+360ドル
業者手数料10〜50万円程度
自分で申請も可能
100〜300万円程度
※2: 業者はほぼ必須
申請料に含まれている
※3: 業者は必須
更新料360ドル/年なし240ドル/年+480ドル/5年
返金預託金は返金可返金可?※4返金不可
預託金の転用クラシック: 投資に転用可
スマイル: 転用不可
転用可プログラム参加料は
転用不可
家族2名まで追加可能 ※5各人個別に取得追加可能
3000ドル+2400ドル/人
※6
初期費用総額約220万円〜600万円約650〜850万円約550万円
  • ※1: 業者に支払う手数料に申請料なども含まれているようです。
  • ※2: クォータビザは他のビザ以上に移民局などとのコネが必要なようで、業者を通すことがほぼ必須らしいです。また、詐欺も多いようなので要注意。
  • ※3: ASRV の情報を日本語・英語共に調べたのですが、「APECO事務局 日本サテライトオフィス」というところを除いて、情報がほとんど見つかりませんでした。実質的に、同事務局を通すことが必須だと思います。
  • ※4: 預託金なので返金可能と思われますが、こちらも日本語・英語共にあまり情報はみつかりませんでした。
  • ※5: 3名以降は、預託金が追加で1人あたり+15,000ドル
  • ※6: 3名以降は1人あたり9000ドル+2400ドル

初期費用がそれなりに高く、返金・転用が一切出来ない ASRV は、費用面では不利です。

クォータビザの場合、家族とともに移住する場合は高額になってしまいます。

手続き関連: ASRV が一番簡単

次に取得及び更新の手続きについてです。

SRRVクォータビザASRV
対象年齢35才以上20才以上なし
取得時に必要な
現地滞在日数
30日以上30日以上5日
取得時の必要書類パスポート
戸籍謄本
無犯罪証明書
パスポート
戸籍謄本
無犯罪証明書
パスポート
住居の確保必要必要不要 ※
更新手続き1年または3年毎毎年5年毎
出国時の
再入国許可
不要必要不要

※: APECO リゾート施設内が住所となります。フィリピン国内の別の場所に住所を移すことも可能

手続きの面では、ASRV が有利です。

就学・就労

SRRVクォータビザASRV
就学可能
SSP 免除
??※可能
SSP 要取得
就労可能
AEP 要取得
可能
AEP 取得不要
本人のみ可能
AEP 要取得

※: 情報が少なく、分かりませんでした。前述の通り、家族同伴の場合クォータビザは費用面で不利ですので、家族同伴の場合は他の2つのどちらかにすることをオススメします。

SSP は Special Study Permit の、AEP は Alien Employment Permit の略です。それぞれ就学許可・就労許可、といった意味合いです。

さて、3つのステータスに関する話に戻りますが、子供を同伴する場合、就学がしやすい SRRV が一番良いと思います。

就労に関して言うと、フィリピンで仕事をする場合には、クォータビザが一番良いと思います。

ただ、フィリピンからリモートワークで日本の仕事をする場合などに AEP が必要かどうかと言うとグレーで、

  • AEP を取得した上で、フィリピン国内に納税する
  • AEP なしで、日本に納税する

という選択肢があります。これに関しては、別途記事を書きましたので、参考にして下さい。

その他

SRRV、クォータビザ、ASRV いずれも、銀行口座の開設は可能です。

SRRV は昔からある制度のため、認知度も高く代行業者も多いため、取得は比較的簡単だと思われます。

クォータビザは、申請方法などで不透明なことが多く、業者選びが決定的に重要です。実質的に1〜2社に絞られると思います。

ASRV は比較的最近始まった制度で、当初は(一般の人に対しても移民局の人に対しても)認知度が低く、ASRV ホルダーが入国審査時などに永住権扱いされないなどの問題がたびたびあったようですが、最近は改善されているようです。

結局どれを選ぶべきか

現地で働きたい → クォータビザも選択肢

ASRV でも AEP を取得すれば就労可能ですが、必ず取得出来るとは限りません。一方、クォータビザであれば、就労にあたり AEP の取得は不要です。

現地企業で就労する場合は、就労ビザという選択肢も考えられますが、雇用先の企業の状況に左右されてしまいます。フィリピンの就労ビザは比較的取得しやすい方ですが、それでも就労ビザのサポートをしてくれる企業の方が就業する人より立場が強くなりがちで、賃金が低く抑えられる傾向にあります。その点、ビザ・AEP の心配が必要ないクォータビザは有利です。

フィリピンに住みながらフリーランスとして活動する場合、日本企業などフィリピン国外企業を相手の取引だけであれば、法的にはグレーですが AEP を取得しないでも基本的には問題になりません。(詳細は、以前の記事を参照。)

フィリピン国内の企業とも取引する場合は、就労可能なステータスで無いと問題となりますので、クォータビザが選択肢となります。

法人設立の場合は、事業内容・規模・フィリピン人の雇用の有無によって変わってきますが、クォータビザであれば大半のケースはカバーできます。

なお、クォータビザの欠点としては、以下が挙げられます。

  • 年間の枠が少ない(各国50人)
  • お金がかかる
  • 取得のプロセスが不透明、業者次第

忙しい人 → ASRV

SRRV、クォータビザの取得のためには、通常はフィリピン国内に1ヶ月程度滞在することが必要ですが、ASRV であればフィリピン滞在が5日で済みます。日本を1ヶ月も空けられないような忙しい人にとっては、 ASRV が有力な選択肢となります。

ちなみに、SRRV の場合、いくつかの業者では1ヶ月より短時間の滞在で済むプランもあるようです。

現地に永住はしないけど、永住権が欲しい人 → ASRV

フィリピンに永住したい人は、ビザ取得時に現地の滞在日数が長い事はあまりデメリットにならないと思います。例えば SRRV であれば、現地に40日とか滞在して、取得出来たらそのまま滞在し続ける、というのも良くあるケースだと思います。

一方、フィリピンに永住はしないけど、以下のような理由で永住権が欲しい人には、現地滞在が4泊5日で済む ASRV は魅力的です。

  • 銀行口座・証券口座を作りたい
  • 頻繁に長期滞在したい(例:毎年冬の時期だけフィリピンで暮らしたい)
  • 当面は日本に住むけど、何かあった時の移住先を確保したい

お金を節約したい、その他の人 → SRRV

ASRV は、SRRV に比べて費用面で不利です。そもそも SRRV より高額ですし、人数に応じてかかる追加費用がそれなりの金額です。また、ASRV では、支払うお金は「預託金」ではなく「プログラム参加料」ですので、返金はされません。

クォータビザも、預託金の500万円は引き出し可能ですが、家族も一緒に申請すると初期費用がかなり高くなってしまいます。

それらに比べると、SRRV は、他国のリタイアメントビザと比較しても、金額が安いですし、預託金はビザをキャンセルすれば返還してもらえます。

SRRV のデメリットは以下の2点だけです。

  • 長期の現地滞在が必要で、取得までに時間がかかる
  • 就労には、AEP の取得が別途必要

よって、大半の人は SRRV が最良の選択肢だと思います。

なお、本サイトのリタイアメントビザに関する記事は、以下にまとまっていますので、他国も含めて検討してみるのも良いと思います。

リタイアメントビザ アーカイブ – 非富裕層向け海外移住情報

まとめ

本記事では、フィリピンの3つの永住権を、費用・手続き・就労・就学などに関して簡単に比較してみました。

手持ちの資金、家族構成、永住か日本との2拠点生活か、などによって、どれを選ぶのが良いかが異なってくると思いますが、多くの人にとっては SRRV が一番良い選択肢だと思います。

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