親子留学で英語を学ぶならどこが良い?

海外移住・長期滞在の理由は色々ありますが、「語学(主に英語)を学ぶため」という人も多くいます。その中でも、「子供に英語を学ばせたい」という理由で海外に留学・長期滞在する人も一定数います。

本記事では、親子留学で英語を学ぶにはどの国が良いか、について検討していきます。

2021/8/22: マルタに関する記述を追加しました。

前提

一応、以下の前提で書きますが、完全に当てはまらなくても参考になるかと思います。

  • 一家全員(夫婦と子供)で移住
    • 母親と子供だけで留学し、父親は日本で働くというのは無し
  • 英語留学
    • 学校に通うのは子供のみ
    • 短期の英語留学では無い(日本人学校、インターナショナルスクール、現地校などに通う)
  • 期間は1年以上
    • 1年未満であれば、子供は学生ビザ、親はビザ無しか観光ビザでほぼ問題無い
    • → わざわざ書くほどでもない

候補の国

英語留学できる国

英語留学で行くことの多い国は、主に以下の通りです。

  • 英語が第一言語の国(※)
    • アメリカ
    • イギリス
    • カナダ
    • オーストラリア
    • ニュージーランド
    • アイルランド
  • 英語が公用語の国
    • フィリピン
    • フィジー
    • シンガポール
    • マレーシア
    • マルタ
    • インド
  • 英語が公用語では無いが、よく使われている国
    • タイ

※: 明確に第一言語・第一公用語と指定されていない国もあるが、英語を第一言語とする人が多い国

上に挙げた以外の国でも英語留学可能なところはありますが、キリが無いので省略します。

ここに挙げた候補から、条件を絞っていきます。

条件: 親が簡単に長期滞在できる

「前提」に書いた通り、学校に通うのは子供のみを想定しています。従って、親が合法的かつ割と簡単に長期滞在できる必要があります。

この条件で大半の国が候補から外れて、以下の国が残ります。

  • 英語が第一言語の国
    • なし
  • 英語が公用語の国
    • ○: フィリピン(2022年4月現在、SRRV は50才以上のみ。ASRV は年齢不問)
    • ○: マルタ
    • △: フィジー(リタイアメントビザは45才以上が対象)
    • △: シンガポール(法人設立→就労ビザが恐らく一番簡単だが、若干高い)
    • △: マレーシア(2021年8月以降、MM2H 取得には多額のお金が必要)
  • 英語が公用語では無いが、よく使われている国
    • ○: タイ

○、△ というのは、あくまでビザ・ステータスの取りやすさでの判定です。

候補となった6カ国の紹介

候補が絞られたことで、各国の紹介をしていきます。

フィリピン

ステータス

フィリピンの場合は、SRRV を取得するのが一番良いと思います。親子で一緒に取得できますし、SSP (Special Study Permit) という就学許可の取得が不要です。ただし、SRRV は、以前は35才以上が申請可能だったのですが、2022年4月現在は50才以上の申請しかできません。

50才未満の人は、ASRV など、他の選択肢を検討する必要があります。

なお、留学期間が1年程度であれば、SRRV などを取得せずに、子供は学生ビザ、親は観光ビザの延長、の方が安く済むと思います。

学校の選択肢: そこそこ

フィリピン、特にセブは、元々は韓国人の英語留学先として人気だったのですが、2010年代から日本人も増え始めました。

未就学児の場合は、英語環境の幼稚園・保育園(インターナショナルスクールを含む)に入れれば良いのでそこまで迷うことは無いでしょう。

一方、小学生以上の場合、マニラには日本人学校がありますが、セブには土曜日だけやっている日本語補習校しかありません。従って、必然的にインターナショナルスクール(あるいは私立の現地校)に入れることになります。

インターナショナルスクールの場合、

  • 英語力が低いと入れる学校が限られる
  • 英語力が低いと本来の学年より下の学年にしか入れない
  • 低年齢で入学すると、英語は伸びやすいが、気をつけないと日本語が伸びない・忘れる

といった点には注意が必要でしょう。

インターナショナルスクールの数は、マニラ・セブであればそれなりの数があるので、カリキュラム・学費・校風などを検討して選ぶことが出来ます。

生活: マニラは都会、それ以外は田舎

セブは観光客が多く、治安は比較的良い方です。マニラはセブに比べると治安が悪いのですが、住む場所・生活する場所を選べば、そこまで問題は無いと思います。

物価は、日本に比べると安いので、日本と同じ収入があればゆとりのある生活が送れると思います。

マニラは都会ですが、セブやその他の都市は田舎ですので、都会育ちの人にとっては少し物足りないかもしれません。

マルタ

ステータス

マルタには、今年(2021年)デジタルノマドビザの制度が出来ました。家族も同行可能です。

主な条件としては「2,700ユーロ/月(約35万円)以上の収入が必要」というものですので、そこまで難しくはありません。申請費用も300ユーロ/人(本人、同行家族共に)と比較的低額です。

学校の選択肢: 若干少なめ

マルタには日本人家族が少ないため、日本人学校や補習校などもありません。インターナショナルスクールは、小さな国の中に十校以上はあるため、それなりに選択肢は豊富です。

マルタの公用語はマルタ語と英語です。インターナショナルスクールであればマルタ語の授業は必須では無いので、英語教育という面では心配は無いと思います。

一方、日本語の教育環境は全く期待できないため、低年齢の子供の場合は、オンラインのコースを活用する(あるいはそもそも日本語教育は諦める)、というのが必要となってきます。

生活: 田舎〜地方都市(リゾート)

マルタは東京23区の約半分くらいの小さな島国で、リゾート地です。人口約51万人なので、都市の規模としては田舎の県の県庁所在地くらいです。

物価は日本より若干安い程度だと思います。

フィジー

ステータス

フィジーへ親子留学する場合、親はリタイアメントビザを取得するという選択肢があります。ただし、対象年齢が45才以上のため、両親が若い場合は使えません。

リタイアメントビザ以外ですと、25万フィジードル(約1,340万円)で取得出来る投資家用ビザがあります。7年間有効なので、長期の親子留学にも十分でしょう。

※: フィジーの投資家用ビザについては、近いうちに記事を書く予定です。

短期の親子留学であれば、子供は学生ビザで、親はビザ無しで4ヶ月まで滞在可能です。

学校の選択肢: 少ない

フィジーには日本人学校がないため、インターナショナルスクールに入れることになりますが、インターナショナルスクールの場合にはいくつか注意点があります。(上の方にあるフィリピンの説明のところに書いたので、詳細はそちらをご参照下さい。)

フィジーは大きな国では無く、インターナショナルスクールは2校だけなので、どちらかから選ぶ必要があります。

また、現地校に通っている日本人の生徒も若干名いるようです。

生活: 日本と全く異なる

フィジーは世界幸福度ランキングで2016、2017年に2年連続世界一位を獲得したので分かる通り、フィジーの人は幸せな・ギスギスしていない人が多いようです。

とはいえ、犯罪が無いかというとそういうわけでも無いので、他国と同様に、危険なエリアには近づかないなどの基本的な用心は必要でしょう。

物価は日本より安いですが、激安という感じでも無いです。

ただ、治安・物価などより、生活スタイルが日本と大きく異なるので、人によって向き不向きがあるでしょう。世界幸福度調査で分かる通り幸せな国民が多いですが、言い換えると良く言えば大らか、悪く言うと適当な人が多いようです。

フィジーは発展途上国ですが、本記事で取り上げている他国に比べても、全般的にさらに遅れています。長期滞在の前に、短期滞在などで感覚を掴んでおいた方が良いと思います。

シンガポール

ステータス

シンガポールに長期滞在する場合、以下の選択肢があります。

  • 就労ビザ
    • シンガポールの会社に雇用される(本ブログでは扱いません)
    • 自分でシンガポールに会社を設立する
  • 学校に通う子供の親として、Long Term Visit Pass (LTVP) を取得する

シンガポールに会社を設立して就労ビザを発行する方法は、以前記事を書きましたので参考にして下さい。

子供が学生ビザを取得して学校に通う場合、親は保護者として Long Term Visit Pass (LTVP) を申請・取得することも可能です。詳細は、近日中に書く予定です。

学校の選択肢: 豊富

シンガポールには日本人学校が2校あり、またインターナショナルスクールも数十校はあるため、選択肢は豊富です。

インターナショナルスクールの中には、日本人も多く在籍している学校や日本人教師がいる学校もあるようなので、子供を日本人学校に入れるのは嫌だけど、インターナショナルスクールの英語の授業についていけるかも心配、という人には向いているかもしれません。

このように、子供の教育環境という面では申し分ないと思います。

生活: 都会

シンガポールは東京のような都会なので、都会の生活が好きな人には良いと思います。

その一方、物価はそこまで安くは無く、家賃はかなり高いです。

また、整然としていて綺麗なのですが、自然が少ないため、自然に触れたい場合には隣国のマレーシアに行ったりすることも多いです。

マレーシア

ステータス

マレーシアに長期滞在するためステータスにはいくつかの選択肢があります。

就労ビザは、マレーシア法人もラブアン法人も有効期間が最大2年(更新可能)のため、2年以上の長期での留学を予定しているのであれば MM2H も選択肢となりますが、かなり高額です。S-MM2H であれば比較的手頃ですが、サラワク州に年間15日滞在する必要があるというのがネックです。

また、マレーシアには、通称「保護者パス」(正式名称は Social Visit Pass ※)というものがあり、学校に通っている子供の親が申請・取得可能なステータスです。ただ、この「保護者パス」は、子供1名につき親1名のみしか取れませんので、子供1名に両親という家族構成の場合は使えません。

※: 保護者ビザ、ガーディアンパス、ガーディアンビザ、Guardian Pass などと呼ばれることも多いですが、マレーシアの場合、正式にはそういった名前のビザはありません。

なお、本サイト内にある、マレーシアのステータス関連記事は、以下にまとめてありますので、合わせてご参照下さい。

マレーシア アーカイブ – 非富裕層向け海外移住情報

学校の選択肢: 豊富

マレーシアには、以下の4都市に日本人学校があります。

  • クアラルンプール
  • ペナン
  • ジョホールバル
  • コタキナバル

また、インターナショナルスクールの数も多く、クアラルンプールに80校程度、マレーシア全体では180校程度あるようです。シンガポールと比べても多さが際立つと思います。

また、シンガポールのインターナショナルスクールは、基本的には外国人(シンガポール人以外)向けのものですが、マレーシアのインターナショナルスクールは、マレーシア人の割合が比較的高いのも特徴です。

生活: クアラルンプールは都会、それ以外は田舎

マレーシアもフィリピンと似ていて、首都のクアラルンプールは都会ですが、ペナン・ジョホールバルは日本の田舎の県の県庁所在地くらい、それ以外はリゾートだったり単なる田舎だったりします。

ジョホールバルはシンガポールに近いので、日本で言うと千葉県とか埼玉に住んでいて、たまに東京に遊びに行ったりする、みたいな感覚に近いのかなと思います。ジョホールバル・シンガポール間の渋滞は酷いようですが・・・

物価は日本より安いですが、フィリピン・タイよりは若干高いというところでしょう。ただ、イスラム教徒が多い国のため、お酒の値段は高いです。

タイ

ステータス

タイに長期滞在するには、現状ではタイランドエリートが一番簡単です。

ただ、タイには2018年に開始したスマートビザプログラムというのがあるのですが、それが今後ノマドワーカーでも取得出来るようになるようです。タイランドエリートのように初期費用があまり要らないため、条件に該当する方はスマートビザも選択肢になります。

学校の選択肢: 豊富

タイの日本人学校は、バンコクとチョンブリに1つずつあります。

また、タイはマレーシアと同様にインターナショナルスクールが多く、バンコクだけで100校以上あります。マレーシアと同様、外国人だけで無くタイ人生徒も比較的多いようです。

ただ、マレーシアの公用語がマレー語と英語なのに対して、タイの公用語はタイ語のみです。英語を話せる人は多いですが、日常で英語に触れる機会はマレーシアより少ないと思います。

生活: バンコクは都会、それ以外は田舎

都会か田舎かというと、フィリピン・マレーシアと同様、首都のバンコクは大都会ですが、それ以外の都市は小都市か田舎です。

個人的な感覚ですが、治安に関してはマレーシアと同程度で、まぁまぁ安全かと思います。

物価に関しては、マレーシアより少し安いかと思います。

他の選択肢

候補から外れた国で、代替案となり得るものを記載します。

  • 英語が第一言語の国
    • アメリカ: なし
    • イギリス: ワーキングホリデーあり
    • カナダ: ワーキングホリデーあり
    • オーストラリア: ワーキングホリデーあり
    • ニュージーランド: ワーキングホリデーあり
    • アイルランド: ワーキングホリデーあり
  • 英語が公用語の国
    • インド: 法人設立→就労ビザで出来そうだが、まだ調査できていない
  • 英語が公用語では無いが、よく使われている国
    • なし

ワーキングホリデー

ワーキングホリデーは国によって制度が少しずつ異なりますが、一般的なものとしては

  • 30才未満が対象
  • 滞在期間は最長1年間

となっています。未就学児童の親子留学などには向いていると思います。

投資移民

マルタの投資移民制度は、他国に比べると比較的安価で35万ユーロ(約4,670万円)の不動産購入などで取得出来ます。他国の投資移民制度は日本円で1億円以上するものが殆どなので、比較的安価と言えます。

なお、1億円以上余裕で用意できるような方であれば、英米など、英語圏の先進国への移住も選択肢です。

結論(かなり主観が入ってます)

安さ重視ならフィリピン

お金に関しては、ステータス取得費用と学費・生活費の2つの点を考える必要があります。

ステータス取得に必要なお金は、安い順に以下の通りです。

  1. マルタ(デジタルノマドビザ)
  2. フィリピン(SRRV スマイル)
  3. タイ(タイランドエリート、ファミリーエクスカーション)
  4. フィジー(リタイアメントビザ)
  5. マレーシア(S-MM2H)
  6. シンガポール(法人設立)

学費・生活費に関しては、
フィジー<フィリピン、タイ<マレーシア<マルタ<<シンガポール
という順番かと思います。

ステータス取得の金額が安く有効期限の無く、学費・生活費も安いフィリピンが、安さ重視の人にはオススメです。

最近出来たマルタのデジタルノマドビザでしたら、取得にかかる金額はわずかです。物価などはヨーロッパなのでそれなりにしますが、EU 圏へのアクセスのしやすさを考えると選択肢としてはありかもしれません。

フィジーも良さそうに見えますが、フィジーには

  • 安いが、フィリピンとそこまで大きく違うわけでは無い
  • 学校の選択肢が少ない
  • 生活インフラが他の国に比べると整っていない

といった欠点があるので、万人にお勧め出来ないと思います。もちろん、フィジーの国民性や生活スタイルに魅力を感じる方であれば、迷わずフィジーを選ぶべきでしょう。

タイのタイランドエリートは、家族向けで安価な「ファミリーエクスカーション」というタイプは期限が短い(5年)のがデメリットでしょう。お金をもう少し出して、「ファミリーオルタネイティブ」という10年のものにするという選択肢もありますが、そうするとお金がかなり高くなってしまいます。

マレーシアは、S-MM2H は比較的手頃ですが、サラワク州に年間15日滞在する必要があります。毎年夏休みなどに家族でサラワク州に滞在するというのが現実的でしょうか。

MM2H であればクアラルンプールにずっと滞在していても問題無いですが、取得に必要な金額が大幅に上がってしまい、非富裕層にはちょっと手が出しづらくなってしまいました。

教育環境ではマレーシア

今回挙げた国の中で学校の選択肢が多いのは、マレーシア・タイ・シンガポールでした。

ただ、シンガポールは物価(家賃)が高いこと、タイは英語が公用語では無いため日常で英語に触れる機会が他の国よりは少ないことを考えると、マレーシアが一番良いかと思います。

エリートに育てたいならシンガポール?

シンガポールという国は、世界的な金融センターであると共に、多くのグローバル企業がアジア地域を管轄する拠点を置いているという、アジアにおけるビジネスの中心地という特徴があります。

シンガポールに住んでいる外国人というのも、そうした世界的な金融機関やグローバル企業に勤務している人とその家族が多く、シンガポールのインターナショナルスクールにはそうした人達の子供が数多く通っています。そうした子供達の多くは、小さい頃からエリート教育を受けており、かなりの割合で一流大学に進み、その後に一流企業に勤めたり、自身で起業したりします。

そうしたエリートの卵達と学生時代から繋がることが出来るというのは、シンガポールのインターナショナルスクールに通うメリットだと思います。

もちろん、デメリットとしてはお金がかかる、ということですが・・・

総合的にはマレーシアがバランスが取れている

各国、色々と長所・短所がありますが、マレーシアが総合的にバランスが取れていると感じています。

  • 学校の選択肢が豊富
  • 学費・物価もそれほど高くない
  • 国としてもそこそこ発達しているし、クアラルンプールは都会
  • 英語が公用語なので、日常でも英語に触れる機会が多い

といったところです。

唯一の欠点が、MM2H 取得に必要な金額が高い、あるいは S-MM2H だとサラワク州に年間15日滞在する必要があるという点でしょうか。

まとめ

英語留学が可能な国は世界中に数多くありますが、1. 比較的安価に、2. 長期で、3. 家族全員で移住出来る国というと、意外と限られてきます。

今回紹介した6カ国にはそれぞれ長所・短所がありますので、自分自身が重視する点を考慮しつつ検討する必要があります。本記事が留学・移住先の選択の一助となれば幸いです。

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